警察官の泣ける話/北芝健著

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「警察官の泣ける話」  北芝健(元警視庁刑事)著
帯広告:警察官に語り継がれる珠玉の感動秘話
2010年6月10日 芸文社より新書版 初版 ¥1200+税

 

 本書の「あとがき」には、「自衛隊や警察など治安機関はとかく謂れなき謗(そり)りを受け、ちょっとしたミスを大きく取り上げられて否定されるが、それは先進国、途上国を問わない現実。メディアが反権力の側について、正義や権利を主張、標榜し、世論に影響を与えてしまう事実は、不遜であり、傲岸である」とあるが、現代人のものの見方や考え方の拠りどころがメディアである以上、取捨選択は個人の自由裁量であるとはいえ、仕方のない状況ではある。

 とはいえ、私が本書をピックアップしたちょうどその頃、つい一週間ほど前のTV放映で、ある交通事故が採り上げられた。自転車に乗った若い女性が夜の道路を横切ろうとしたとき横から直進してきた乗用車にノーブレーキでぶつけられ死亡した事故である。信じられないのは、この事故処理を担当した警察官が乗用車を運転していた男性の父親だったということだ。これが本当だったら、警察という機関の常識というものを疑わざるを得ない。普通なら、近親者ではなく、別の警察官に事故の処理を任せたであろう。

 しかも、轢き殺した男の自白が二転三転したこと、死人に口なしで、自白が変化するたびに、初めは女性が横断したのは横断歩道だったのが道路の真ん中になり、最後には初めに横断した歩道ではなく、向かい側の歩道になってしまったことで、明らかに、自転車が赤のシグナルを無視して道路に侵入したかのように装うとした意図が見えてくることで、女性は青だったから横断歩道に自転車を進めたという事実をひっくり返すための自白内容の意図的な誘導という印象だった。このTV放映が事実だとしたら、上記した「あとがき」でいう「ちょっとしたミス」ではすまされないだろう。

 さらに、最近のニュースによれば、検察も警察も、自供を取るにあたって、初めからストーリーを作っていて、それに沿った自供を取るために恫喝したり、その場から故意に離れたりするという。そういう自供を促す手法はやはりまずいとしか言いようがない。

 本書の内容はいわば「人情話」であり、帯広告にあるような「珠玉の感動秘話」などという表現からは遠い。

 著作から初めて知ったことといえば、

 (1)警察官は風俗業で働く女性とは結婚できない。

 (2)警察官には一般人に比べ、自殺が非常に多い。

 (3)警察官でもキャリア以外は外国人と結婚できない。

 海外事情に多少でも接している私個人の印象では、アメリカを含め、日本警察は他国の警察よりずっと真面目だし、傲慢でもない。「あとがき」にあるような、「先進国にも非先進国にも同じ事情がある」というのは間違った認識であり、途上国の大半では警察官がなにかというとすぐ賄賂を堂々と請求するし、先進国の警察官にしても必ずしも一般人からの信頼が厚いとはいえない。


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