金正日の正体/重村智計著

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「金正日の正体」  重村智計(1945年生/毎日新聞社論説委員を経/早稲田大学国際教養学部教授)著
講談社新書  2008年8月初版(本書は数年前に単行本で出版されている)
副題: 北朝鮮最大の謎に迫る

 

 本書は、「死亡説は本当か」「影武者はいるのか」「後継者問題のゆくえは」という三つの主要な分野に軸を据えて書かれたものだが、正直にいって、時系列はでたらめ、同じ内容の繰り返しが多発、内容が前後したり、異なる章で再出されたり、タイトルとは無関係の話が長々と説明されたり、文全体の流れがいたるところで阻害され、新聞社の論説を書いていたプロの手による文章構成とは到底思えない。はっきり言って、文章から自己顕示欲だけは強い、手柄話しに終始する、顔からは想像しなかった欠点ばかりが目についた。

 「なるほど」と思った点だけを拾って列記する。(  )内は私の意見。

1.影武者のことを英語ではダブルというが、金正日には4人前後の影武者(女性1人を含む)がいる。概して、アウトドアの儀式には影武者を、インドアでの会議などには本人が出席する例が多い。影武者は総じて整形手術を施されているが、この手法を採用するようになったのは軍事パレード時に戦車による暗殺計画が発覚したことによる。以後、軍事パレードに兵器の持ち出しは禁止された。暗殺計画はその後もあったが、その計画の裏にはロシアKGBの関与があると言われる。(だとしたら、列車を使って、しきりにロシアを往復する意図が理解できない)。

2.金正日は1982年から89年まで、万景峰号(まんぼんようごう)を使い、偽のパスポートを使って何度も日本に入国、東京の赤坂にあるナイトクラブを訪れていた。当時、日本の入国管理局はこの船に関し、管理権を朝鮮総連に任せていた。こんな国は世界に例がない。(北朝鮮の貨物船が日本のあちこちの港で鉄屑や自転車、電化製品を積んでいた時期、船が座礁して、船員だけ飛行機で帰国したあと、地方自治体はその始末に余計な金を使わされている。海上保安庁や警察は何をしているのかと言いたくなる。だから、偽ドルも入ってくるし、麻薬も入ってくる。日本人の拉致など簡単だったであろう。日本人の危機管理が後手後手になる悪い癖は昔も今も同じ)。

3.2003年以降、現地の指導同行者が軍部隊に集中するようになり、現地指導随行者が一部軍幹部に限られるようになった。金正日の父、金日正廟への参拝がなくなった。軍幹部が金正日総書記を囲い込み、他との接触を拒絶させている可能性がある。一時期、総書記は車椅子を使っていた。

4.総書記は拉致に罪悪感を全くもっていない。彼の軍事力を背景とする現実主義、国際社会における外交手法はマキャベリズム的発想にべ-スしている。

 (本書では長々と、マキャベリズムについて説明しているが、その必要は全くない。ことほどさように、余計な説明が各所に多発するのが読者を苛々させる)。

5.2000年に韓国の申映画監督の妻(映画づくりの目的でまず妻を拉致し、続いて監督を拉致した)が密かに総書記の声を録音し、2004年に小泉首相がピョンヤンで会談したときの声とを声紋検査したところ、別人だとの結果が報告された。ただし、総書記は落馬したことがあり、その折り、歯を折り、顎を骨折し、口中の構造に変化が起こったと言えなくもない。映像的には耳の形は同じであった。耳は整形手術の対象とはなり得ない。

6.2007年、2008年と、外交面での政策がしばしば唐突に変更されるようになったが、そのようなことはかつてなかったことで、この事実から、あるいは「死亡説」は真実かも知れないとの判断も否定できない。今年は軍事パレードに出席しなかったこともあり、「何かが変だ」という感じは拭えない。現在、北朝鮮内部では後継者擁立の抗争が続いているとの噂もある。

7.朝鮮総連と北の工作員の存在が日朝関係改善を阻んできた。改善してしまうと、かれらが役割を失うから。朝鮮総連の発言のうち90%は嘘である。かれらはジャーナリズムというものを理解していない。(だったら、朝鮮総連を潰すか消す以外にない)。


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