金融危機の本質は何か/野口悠紀雄著

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書評:ためいき色のブックレビュー-金融危機

  「金融危機の本質は何か」  野口悠紀雄

  著者略歴:1940年生/スタンフォード大学客員教授を経、現在早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授

  帯広告:証券化やクレジット、デフォルト、スワップは悪魔の発明か

  2009年2月12日 東洋経済新報社より単行本初版 ¥1,800+税

 読み進むうちに、作者が「今回のアメリカ発の金融恐慌から発したファイナンスのあり方に対するバッシングに対し、ファイナンスのあり方そのものに問題があったわけではなく、その取り扱いに問題があったのだ」と、あくまでファイナンスを専門とする立場を擁護する内容となっていることに気づいた。

 そのうえ、大昔のイギリス金融界を牛耳ったロスチャイルド家、アメリカ金融界で破綻したエンロン、ポートフォリオ・インシュアランス、LTCMなど、いまさら知りたいとも思わぬ金融破綻した企業を挙げつらって、説明してもらっても、そんなことを知りたいために本書を手にしたわけではない。

 私が興味を惹かれたのは、あくまで「現況下に発生している、アメリカ金融業界を元凶とする、世界を巻き込んだ今日まで例のない「金融恐慌の本質とは何か」であり、そういうことに関連した話があまりに出てこないため、目次の章に目を通してみたら、タイトルを裏切るような章ばかりが並び、「ことの本質」に迫ろうとの内容でないことは明らかだった。タイトルとは関係のない余計なことばかりで内容を構成している。

 こうした、タイトルが内容とは裏腹という書籍が最近増えているが、「売らんがための詐欺行為」だと私は思う。

 本書はファイナンスに関する、学生を相手にしたレクチャーではあっても、決して、現況の世界を席巻している金融危機を説明するものではなく、読者を裏切るものだ。

 本来なら、危機が起きた原因、危機を防止するための方策、危機が今後どこまで進行するか、どの国が最も火の粉をかぶるか、被害を受ける産業別の仕分けと程度、恐慌が終焉するまでのおよその歳月などにかかわる説明のほか、将来のファイナンスはどうあるべきか、そして、肝心のアメリカ経済、日本経済の行方はどうなるのか、などを期待した読者は煮え湯を飲まされた印象。


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