鉄砲を手放さなかった百姓たち/武井弘一著

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「鉄砲を手放さなっかった百姓たち」 武井弘一(1971年生)著
副題:刀狩りから幕末まで/銃規制をめぐる幕府・役人・鳥獣との攻防
2010年6月25日 朝日新聞出版 初版 ¥1300+税

 

 タイトルからは百姓たちが内乱に備えていたかのような印象を受けるが、鉄砲は持っていたが、そういった大げさな事態に対応するという目的ではなかった。

 百姓は秀吉の刀狩り以来、武器をもつことを厳しくチェックされたが、江戸幕府開闢以来も兵器としては当時最強のものであった鉄砲を持つことに固執したのは、現今、とくに気象の不安定だった今年などにも顕著な獣(熊、猿、鹿、猪)などから作物を守ることに目的があり、それが許された結果、武士ですら持たぬ銃(といっても火縄銃だが)を所持する権利を有していたということ。とはいえ、農業にとっては敵のうちに含まれる野鳥の駆除に関しては許されなかったという。とくに関東のように「お鷹場」がたくさん存在するところでは、鷹の餌であるという理由で、野鳥の殺傷は厳しく禁じられた。

 幕府としては百姓に鉄砲をもつことを許可したが、百姓らのもつ鉄砲の実数を野放しにはせず、「鉄砲改め」という制度をつくり、許可した鉄砲には焼印を施し、何年かに一度というペースで実地検証を行ない登録調査はしたものの、実際には村を信頼し、村に任せるというのが実態に近かった。

 時代により、将軍により、「鉄砲改め」のチェック内容には若干の差異があったが、アウトローが世に増えたことへの対応や、飢饉が発生した年などに一揆の可能性があり、それらへの対応なども配慮された。

 ただ、藩によって鷹場近隣の百姓には獣すら駆除することを禁じた藩もあり、百姓らは仕方なく、落とし穴を掘ったり、竹や棒を使って追い払うなど苦労させられたケースもある。

 本書は江戸時代の「鉄砲改め」に関する文献、資料をベースに当時の実情を詳細にまとめた労作。


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