閉ざされた国 ビルマ/宇田有三著

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「閉ざされた国 ビルマ」
宇田有三(1963年生/フリーライター&フォトジャーナリスト)著
帯広告:ビルマ(ミャンマー)に民主化の光は射すか
2010年1月30日 高文研より単行本初版 ¥1700+税

 

 私にとってビルマといえば、口笛の「クワイ川マーチ」であり、「ビルマの竪琴」であり、英語の「バーマ」が訛って「ビルマ」という呼称になり、いま「ヤングン」と呼ばれる首都はかつては「ラングーン」だったといったほどの知識しかない。むろん、最近ではビルマがミャンマーに呼称変更され、軍事政権に対抗するアウンサンスーチー女史が長く自宅で軟禁状態に置かれていることは知っている。

 もう一つは、中国と国境を接する地域からは翡翠の原石が採れること。かつて日本は翡翠を中国から輸入していたが、中国側の翡翠はほとんど採り尽くされたと聞く。

 軍事政権下に置かれている国といえば、北朝鮮をはじめ、中国もそうだし、一時のインドネシアもそうだったし、太平洋戦争に突っ込んだときの日本がそうだった。政府に反逆する人間は悉く牢にぶちこまれたか、暗殺されるのが運命だった。そして、ビルマも本書によれば、例外ではなかった。

 著者によれば:

*1993年から17年間、著者はビルマに通い、偏狭の地に抵抗勢力を探してインタビューし、ビルマ国内に入って民衆の本音を聞きだし、軍事政権のありようを肌で感じ、それらを結集してこの著作を完成した。

*コネもなく、アンダーテーブルも使わず、ビザ申請が毎回許可されたことは事実だが、ほとんど稀有のこと。著者はビザ申請を受け付けるオフィスで自分の番が回ってくるまで、現地小学生の教科書を音読し、ビルマ語の習得に努力していたが、その姿勢が評価されたらしいという。

*ビルマの人口は5千万人、国土は日本の1.8倍、40を超える多民族国家、戦前は英国の植民地だった。インド洋のアンダマン海に接する地域は南部のマレー半島西の部分だけ、ほとんどは山国。

*国の支配者は軍事政権独裁、同じ体質の国なら、独裁者の名前が頻繁に表に出るのが一般的であるが、この国の独裁者「タンシュエ」の名が報道されることはほとんどなく、これが不思議。

*報道の自由指数で最悪な国から順に挙げれば、エリトリア、北朝鮮、トルクメニスタン、イラン、ビルマ。

 (北アフリカのリビアも入るのではないか?)

*軍事政権に対する抵抗勢力は(1)ビルマ人主導の民主化運動、(2)周辺諸民族による武装抵抗組織。

*ビルマとタイは国境を1千キロほど接しているため、ビルマ側からタイへ流入する難民が跡を絶たない。とはいえ、難民らはタイ国内の平地へ移動する人とは別に、国境沿いの奥深い山中に逃げこんで生活したり抵抗したりしている例が多く、生活は苦しいという。

*軍事政権がしばしばスーチー女史を自宅軟禁する理由は、彼女が国民のあいだにあまりにも人気があるために、その言動に怯えているというのが真実に近い。

*ビルマ人はビルマ国内を移動するに際し、身分証明書の携帯を義務づけられている。(発展途上国や軍事政権下の国では同じ)

*日本政府がビルマに出した援助700億円のうち、50億円は使途不明金になっている。

*ビルマの軍事政権に対しては先進諸国からの批判もあり、経済封鎖にも遭っているが、やり方が手ぬるいという見方もある。また、同じ軍事政権下の中国政府がことごとにビルマをかばいだてをするのも事実だが、政治に相似性があることに加え、武器の輸出を止めたくないという下心であろう。

*ビルマ人の80%は仏教徒で、アニミズム(自然崇拝)、キリスト教徒、ムスリム教徒、ヒンズー教徒などはそれぞれ5%に満たない。

*2008年5月、ビルマはサイクロンに襲われ、死者14万人、行方不明者と被災者あわせて240万人が出たにもかかわらず、当日に予定されていた国民投票を延期することもなく行なわれ、被災者の救援も優先しなかったし、外国に支援を要請することもなかった。

 著者は17年間ビルマにかかわってきたが、「何かが変わったようには思えない、いわんや人々の生活に希望が見えたとは到底思えない」と語っている。本書は多くの写真が読者を援けてくれる。

 後日になって知ったことだが、ミャンマーの避難民のうち、すでに日本に入国して避難民としての手続きをしている人もるが、簡単には認めてくれないという話。さらに、日本に入国はしていない避難民をビルマの周辺国に出かけて、日本に連れ帰るという事業も行なっているとの話。

 わが国の避難民の受け入れに関してはベトナム以来、一貫して、中途半端で、非積極的なのが目立つ。


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3 Responses to “閉ざされた国 ビルマ/宇田有三著”

  1. hanachan-234 より:

    タイの学校訪問をした際に、
    ビルマ側からタイへ流入する難民の集団を目にしました。
    パスポートをコピーされ、細い通路を通って
    タイからビルマへ渡った時には、緊張しました。
     

  2. hustler より:

    早速のコメントありがとう。ビルマに行ったとはすごいことです。政権自体は観光収入を期待しているので、ビジターは歓迎でしょうが、それでも行く人は決して多くはないはず。

  3. hanachan-234 より:

    >hustlerさん
     ミャンマーで壁掛けなどの買い物をし、
     数時間の滞在だけでタイ側へ戻りました。

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