風が見ていた(上巻)/岸恵子著

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風が見ていた(上巻)

「風が見ていた」(上下巻) 岸恵子(女優)著
帯広告:渾身の自伝的長篇
2006年9月1日 新潮社より文庫化初版 ¥514+税

 本書は上下に分けて書評する。

 岸恵子といえば、昭和を代表する大女優であり、(私の記憶では)、日本で惚れた男に振られ、彼女を求めていたフランス人映画監督のもとに、やぶれかぶれで嫁いだとばかり思っていたが、この自伝的小説によると、家系的にフランスとの縁が深く、そういう血流がフランス映画との縁をつくり、彼女をフランスへと導いたということらしい。

 本書上巻では、フランスとの縁をつくった明治生まれの祖父が田舎の山持ちの家を出て、当時殷賑(いんしん)をきわめていた横浜にやって来る場面に始まり、子をなし、孫である主人公が長じてフランス映画に出演し、渡仏するところまでが描かれている。

 同じ時代に、高嶺秀子という、達意の文を書くことで有名な女優がいたが、岸恵子にも明らかに文才があり、言葉の選択にはやや古臭いものもありはするが、全体的に闊達で、歯切れがよく、一人の女優が駆け抜けた時代特有の背景もよく理解でき、読書に飽きがこない。

 そして、なによりも、本書帯広告にある本人の写真、本書初めに1ページを費やした上半身写真は、いずれも、かつての美人女優の存在を想い起こさせるに充分。


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