風のかなたのひみつ島/椎名誠著

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風のかなたのひみつ島

「風のかなたのひみつ島」 椎名誠著 垂見健吾写真
2002年 新潮社より単行本
2005年6月 文庫化初版

 

 著者の好きな「島への旅」、本書では7つの島を訪れ、それぞれ個性のある島の形状、住人、仕事、学校、習慣、食などが紹介される。訪問した島は、答志島(志摩半島の先)、網地島(宮城、金華山沖)、粟島(佐渡の北)、池間島(沖縄宮古諸島の一つ)、加唐島(佐賀県の北端、玄界灘)、怒和島(瀬戸内海)、加計呂麻島(奄美大島の南端)。

 軽妙洒脱とか美辞麗句とか美文とかいう文体とはおよそ縁のない、徹頭徹尾庶民の言葉を使って文章を練る、そのあたりに読者が親近感を覚え、フアンになる根があるような気がする。つまりは人徳というもので、私もそういうフアンの一人だ。

 なかで、記憶に残ったのは:

1.答志島の「寝屋子」制度。家族もちが寝屋の親代わりになり、一定期間、何人かの子供らを預かり、大所帯で生活するという仕組みだが、こういう制度は世界中どこにもないのではないか。子共らは複数だから、一緒した子供らのなかには友情が育ち、親代わりには実の親には口にできないことでも相談できるから、つきあいは生涯におよぶ。老人が死んで白骨化してからようやく発見されるなどという事態はこの島では起きないだろう。

2.加唐島の学校教師の懸念が語られている。

 「島で純粋培養された子共らが内地に渡って、いきなり目下の日本の激しい情報洪水や露骨な刺激にさらされたとき、どのように折り合っていくかが心配」

3.網地島での特別教育として、「ときどき子供を島から出し、牡鹿半島に渡って、映画を見せ、喫茶店でジュースやコーヒーを飲ませ、コンビニで買い物をさせたりするが、これは「内地に行ったときの生活に慣れさせるためのショックアブソーバーとしての予備体験」で、教育の一貫だという。

4.粟島ではかつて野生馬が生息してたのが、今は絶滅している。

 椎名さんの著作はいつも爽やかで、嫌味のないのがいい。


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