風のはなし/伊藤学編

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「風のはなし」(1)  伊藤学編
1986年10月1日 単行本初版  ¥1500+税

 

 過日、椎名誠の「砂の海、風の国」を2009年1月25日に書評したときに、参考文献として提示されていたことから興味を持ち、入手してみたが、全編にわたり、気象学の専門家ら21人による完全な学術書であった。

 風を測ることの難しさは、自然風のなかには数ミリ以下の小さな規模のものから、地球規模に至るまで、大小さまざまの渦が混在していること、そして、時間的にも空間的にも絶えず変化していることによるものらしい。この事実は、つい最近、NHKで紹介した管制官の仕事とも関連しているのみならず、管制官の風を読むことの難しさを一層際立たせて、納得させられることにもなった。

 ただ、私はかねて「瞬間最大風速」というものの計算の仕方に、先進各国間にある程度の共通点があること、にも拘わらず、その測定値が異なること、概してアメリカでは一層強い風速が発表されるのに比べ、日本では抑制気味の数値が発表されることに長いあいだ疑問を感じていたが、それに関する疑義を晴らしてくれるような説明はなかった。

 国内の最大風速を計測した土地として、沖縄の宮古島がしきりにその名が記録簿に上がってくるが、同じ八重山地方にある石垣島や西表島が上がってこないことの理由は単純で、石垣、西表、両島が山岳地帯を有し、台風はそうしたところにぶつかると、風速が弱まること、したがって、最大標高が野原岳という標高100メートルほどの小山がぽつんとあり、ほとんど平坦な宮古島では、風速は弱まることなく、ありのままの強さで通過することで、つい数年前も、島の電信柱がすべて倒れてしまい、相当数の船が沈没あるいは破損をしたという被害がもたらされた。

 その折り、気象庁は最大風速は70メートルと発表したが、宮古島に居住し、海の仕事をしている知己に直接連絡して、その折りの風速に関し、状況との比較から私の疑義を伝えると、かれらは「瞬間的に100メートル近い風速だったことを主張、「でなかったら、電柱が全部倒されることはありえない」と主張した。

 ただ、椎名誠がこんな学術的な本まで参考文献として目を通していたことには、あらためて、敬意を覚え、彼が彼なりに、精一杯の努力をしていることを認識した。


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