食べない人/青山光二著

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「食べない人」 青山光二(1913年生)著
「四季の味」「東京新聞」などに2000年から連載されていた短編を集めて上梓
2004年に川端康成賞を受賞(90歳時)
筑摩書房  2006年5月初版 単行本

 

 曰くありげなタイトルに魅入られて入手してしまったが、内容は逆に「食べる話」。文壇の現役、最高齢者の作品にぶつかり、そのうえ内容の大半が、今月の23日に書評した「夢か現か」とほとんど同様の、文壇人や知己との昔々の交流という、読み手としては関心のないもので埋められ、舟橋聖一、丹羽文雄、武田麟太郎、永井荷風、正宗白鳥、久保田万太郎、石川達三、田宮虎彦、菊池寛などなど、かつての文壇を仕切っていた超有名人とのエッセイ風の交流話には長寿の著者の面目躍如たるものを感ずるが、だからといって、それが格別に面白いとか、すごいとか、という気持ちには結びつかなかった。

 そうした話がトータル236ページのうち142ページを占め、外食しても、金額はほとんど20銭から40銭までという時代の話が延々と続き、読み継ぐ気力が萎えてきたとき、「介護日記」から現在に近い話になって、目が覚めるような気持ちで最後まで読みきった。

 ことに、最後の「暗い部屋」は若い頃の実話で、臭いメシを食ったときの話、この章だけは100%ノンフィクションだと著作者本人が公言している部分だが、特段に面白い。

 二度連続して、70歳、93歳の作家の著作に接したのも何かの縁と思っているが、93歳の、肝心の男性としての道具が使えなくなっている作家が「キス」とか「セクス」とかいう言葉を作品のなかに使う点、頼もしささえ感じられる。いや、ひょっとして、作者の下半身は今でもしゃんとしているのかも知れない。


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