魂がふるえるとき 心に残る物語 日本文学秀作選/宮本輝編

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魂がふるえるとき
「魂がふるえるとき 心に残る物語 日本文学秀作選」
 宮本輝編 文春文庫

 
 受験時に、タイトルと作者名だけは覚えさせられたという文学書がある。といって、それら名のある作品に接したことがあるかといえば、残念ながらそうでもない。一口に文学といっても、古今に何千何万と存在するし、読書が好きな人ですら、生涯に読書できる量は知れている。そのうえ、文学作品の量は増え続けている。さらに、人間には傾向というか嗜好というか、癖とか、そういうものがあり、年齢によっても変化するから、読書には偏りが否定できない。

 そこで、同じ人間として、やはり偏向のあるだろう文学者の一人、宮本輝が選んだ作品を読むことで、選ばれた文学者を知り、作品を知り、と同時に、宮本輝その人の人間性をも窺い知ることができる書物として、本書を読んだ。

 本書には16人の作家(明治生まれから昭和生まれまで)による16の作品が収録されている。もし、このなかに気にいった作品があったら、その作家の別の作品を読んでみるという道もある。自分で選んでいたら、これほどの作品には出遭わなかっただろうと思える点、本企画に感謝する。

 永井荷風の作品「ひかげの花」だったと思うが、「待てば甘露が降ってくる」という言葉を知って驚いた。「待てば海路の日和あり」は知っていたが、「甘露が降る」は知らなかった。

 宮本氏の選択した作品はわりと平凡、というか、思っていたほどの癖もなく、まともなことに一驚。


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