麻雀放浪記(二) 風雲編/阿佐田哲也著

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麻雀放浪記

「麻雀放浪記(二)風雲編」
阿佐田哲也(1929-1989)著
角川書店 1979年9月文庫化初版

 

 2007年6月16日に同書(一)の「青春編」を書評して以来、手に触れなかった(二)をようやく読破した。

 まず驚いたのは解説が江國滋だったこと、そこに、「阿佐田哲也と色川武大は同一人物で、後者は1978年に『離婚』という作品で直木賞を受賞しているが、阿佐田哲也は賞に恵まれていない」こと、さらに、「本書は人間の筆から生まれた吹き溜まりの宝石といっていい作品であるにも拘わらず、このような書物が可能になったのは麻雀の配牌の絵を活字にすることができたからで、活字化がそのまま麻雀に関心のない人には全く読まれないという副作用を生み、それが残念でもあり遺憾だ」とあったことだ。

 作者も解説者もすでにこの世にないが、本書は現実に文庫化されてから2005年までに50版を重ねていて、江國滋の読みは杞憂だったことになる。

 本書を読んであらためて感ずるのは、時代が戦後10年以内のことで、輪タクがまだ走っていたという古さと、いかさまに終始する麻雀の在り方のいかがわしさに満ちた時代と現代との乖離を深くしていることであるが、逆に当時の社会的な背景が強烈な匂いを放っていて、そうした風景が存在した事実を後世に伝えるという点では意義深いものがあること。

 さらに、麻雀自体のこと以上に、人間関係に現代にない奇怪で、粘着的で、独善的なものが庶民性を伴っていることが窺え、作者のストーリーテラーとしての才能に依拠していることを認識させられた。登場人物が、ステテコ、出目徳、サブ、ドサ健、上州虎、ギッチョ、達磨、タンクロウ、ドテ子などで、その命名のセンスの良さにも一驚を喫した。


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