黒の様式/松本清張著

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黒の様式

「黒の様式」 松本清張(1909-1992)著
1967年 光文社より単行本初版
1973年9月25日 新潮社より文庫本初版
帯広告:生誕100年記念復刻第一弾

 本書には「歯止め」「犯罪広告」「微笑の儀式」の三編が収められている。

 私にとって、この三編は初めて触れる作品だった。いずれもおぞましい事件だが、どの作品にも、ストーリー性に作者の強引な、かつ意図的な力業を感ずる。

 かつて、松本清張全盛期の頃に接した清張作品から受けた印象は、社会派ミステリー作家といわれたように、内容が我々読者にとって卑近な例だったり、新聞の三面記事を賑わす事件だったりしたことにあり、その斬新性に痺れたものだったが、現在こうして読んでみると、早かったはずのテンポもそれほどではなく、スムーズだった展開にも強引さと無理を感ずるし、独特の文章にも荒さと同時にうんざりするものを感じた。

 収容された三作は、生誕100年を祝って、あらためて上梓されるほど、作者の作品を代表する内容ではない。清張を代表する作品といえば、私の個人的な嗜好でいうなら、宮本輝が「泥の川」であるように、「西郷札」であり、これを超える作品はない。

 いずれにも共通するのは、「つくりもの」ではないニュアンスがいずれの作品にも窺えるからである。


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