1900年のハリケーン/エリック・ラーソン著

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ハリケーン


    「1900年のハリケーン」  エリック・ラーソン著 

     島田三蔵訳  文春文庫刊

   

 つい先日(2005年に入ってから)も、カリブ海からメキシコ湾を襲ったハリケーン(カトリーナ、ウィルマなど)の猛威をテレビで紹介していたが、それを見て思い出したのが本書である。

 カリブ海で発生、周辺地域を巻き添えにしながら、フロリダ半島からテキサス州にアタックするハリケーンは数年に一度はかなりの頻度で襲来し、被害はその都度報告されているが、本書が語る1900年にかれらが経験したハリケーンが巨大で、かつ破格のものだったことを伝えている。 本書はそのありさまを克明に映したもの。

 訳者の「あとがき」を借りれば、アメリカの年鑑「ワールド・アルマナック」のなかの「ハリケーン、台風、ブリザード、その他」の項目のなかで人的被害の面でいえば、1970年にバングラデッシュを襲ったサイクロン(インド洋では台風をサイクロンという)は死者30万人を出したが、それと比較して、1900年のテキサス州のガルヴェストンを襲ったハリケーンは6000人の死者を出した、文字通り、アメリカでは空前絶後のものだった。(バングラデッシュでは最近でも再びサイクロンによる大きな被害に見舞われている)。

 著者は生存者への取材に力をいれ、それぞれの証言を巧みに構成して、一度読み出したら途中でやめられないほどの迫力と恐怖をほとんどヴァーチャル体験させてしまう。

 自然災害に人災がつきまとうことはよくあることだが、このハリケーンのおかげで、それまで活気に満ちていた都市、ガルヴェストンを一夜にして崩壊させ、それ以後いまにいたるも一地方の冴えない一都市と化してしまった。 (都市間の競合があったからだ)。

 ドキュメンタリータッチの書物は人間の所業にしても、自然の猛威にしても、真実が書かれ、真実が教えられるから、飽きることがない。 アメリカでベストセラーになったのも納得がいくが、今回の被害を知って、本書を想起した人々は少なくなかっただろう。ただ、最近は、ハリケーンにしても、台風にしても、サイクロンにしても、米国大陸を襲う竜巻にしても、地球温暖化とともに、規模も危険度も飛躍的に増大していることは事実。

 大国、小国、いずれも自然の猛威には敵し得ないことを学ばせてくれる書。

 


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