5000年前の男/コンラート・シュヒンドラー著

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5000ねんまえのおとこ

「5000年前の男」
コンラート・シュヒンドラー著
畔上司訳  文春文庫

 

 欧州でミイラが発見されることはめずらしい。それがオーストリアとイタリアの国境付近、雪深いところ、標高3千メートル以上の山地で凍結したまま、ほぼ「完全な姿形を保って」発見された。

 発見から調査を経て、男が生きていたころの地位、生活、行動など、学者による推理がいろいろになされていく、その過程がスリリング。なにしろ、男はミイラといっても、骨組みはしっかりした形だし、死体自体からも想像力を刺激され、欧州に生まれた古代ドラマとしてはマッターホルンやモンブランなどの登頂記録にもまして、読者の関心を呼び寄せる。

 本書の表紙には凍結ミイラの写真が掲載され、背を向けたその姿がなにより見る者の目をとらえて離さない。

 この手のドキュメンタリーは読んで損することは決してない。ノンフィクションの好きな人にはぜひ一読をお勧めする。なにしろ、欧州で発見された初めてのミイラであり、それが5000年以上の歳月の経ったミイラだとしたら、エジプトのミイラよりもミイラとしては古いということであり、今後こうした発見が再び欧州で起こることはないだろうから。

 そのうえ、この発見があって以後、かつてエジプトでツタンカーメンが発見された後、呪いがかけれらたように、次から次へとかかわった人たちが変死したという怪奇現象が起こっているのと同様の不可解なことがこのミイラに拘わった人に起こっていると仄聞する。


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