外交官が見た「中国人の対日観」/道上尚史著

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gaikoukangamita

『外交官が見た「中国人の対日観」』  道上尚史著
文春新書
2010年8月20日 文春新書初版 ¥780+税

 著者は2007年から同09年まで、北京の日本大使館に勤務した外交官で、自身の目で見たありのままの中国を観察、感情的な意見が多い両国における実態を排除、この重要な隣国をどう理解し、どう付き合えばいいか、読者ととともに考える材料になればとの思いで本書をまとめたもの。

 そのため、私のように個人的には中国を嫌いながら気になって仕方がないという読者には冷静、怜悧な見方、考え方を供与してくれる。

 以下、*の入った箇所は本書からの抜粋、(   )は私の意見。

*ネット空間には管制のメディアには出てこない民衆の本音が出てくる。中国は環境、福祉などの問題を配慮から外し、遅れた途上国に過ぎないと自省する学生もいるし、一般にネットユーザーは中国の将来を楽観していない。

*2008年5月の四川大地震の時、真っ先に駆けつけたのは日本の緊急援助部隊であったこと。一人の遺体を囲んで隊員が整列し、頭を下げているシーンが多数ネットに紹介され、「自分たちに同じことができるだろうか」という感想が出た。このときの日本人援助部隊が「日本人は質が高い」というイメージのきっかけをつくった。

*中国人学生が修学旅行先に日本を選ぶこともあるし、他方、日中間には学生の交互ホームステイの機会が与えられもする。

 優秀な高校生の修学旅行先を日本にしたとき、帰国後の感想文のなかに、「日本もかつて公害があり、痛ましい被害に悩んだ時代があった。そのため、国民、企業、メディア、政府も目覚め、以来、汚染排除を規制する政策が講じられるようになっている。中国はいつ健全な方法で日本と同じレベルに達することができるのか?

 ある女子高生からは「日本人のイメージは「おしん」を見、与謝野晶子を知って、考えが変わった」という発言もあったし、「日本のメディアは真実を追究するという強い使命感をもっていることを知った」とも。

 (修学旅行といって思い出すのが、ニ昔以上古いことになったが、四国の高校生が中国国内で乗った鉄道事故で大量死を招いたこと。自らかけた保険金とは別に、中国側からは僅かな金額しか慰謝料がなかったこと)。

 (とはいえ、滞在中に浅草で肩がガチンとぶつかりながら、日本人は咄嗟に「ごめんなんさい」と言ってるのに、中国人は見向きすらせず、一言も発せずに、その場を去ったことを、日本人は忘れないし、そういうマナーの悪いのが中国人だと思うようになっていることを知るべきだ)。

*中国も韓国も学歴社会。中国では勉強さえできれば高評価が得られはするが(科挙の延長線上)、その他の可能性を潰してしまう可能性も否定できない。海外への留学では中国に次いで韓国が多いが、日本は比較にならないほど低い。とはいえ、中国ではいったん落ちこぼれると、疎外感は深く、立ち直れない。胡主席は訪日したことがあるが、そのとき、「本当の日本をみて、日本が好きになった。日本に対する印象の変化は大きかった。日本は軍国主義で怖いと思っていたが、実際の日本は違っていた。(2007年9月人民日報)。

 (中国は今でも一人っ子政策を継続しており、過保護で育ち、社会性の欠落した青年が富裕な家族に多いとも仄聞する。こういう世代が政権を担当する時代、中国はまっとうな道を歩めるのか疑問)。

*「中国メディアは党の宣伝機関で、政府に都合のいいことばかり書いているという認識だったが、実際には批判記事も相当あり、当局より国民の反応に神経を使っていることを知って意外だった」とは日本人学生。その日本では企業で若い人が意見を口にすることは迷惑がられるばかりか、アホ呼ばわりされる。トップはトップだけで会議ばかりして決断がない。日本から真似したくないのはマネージメントである。一方、中国人はスポーツ観戦にいまだ慣れていず、マナーの悪さは心ある中国人にとっては恥ずかしい限り。

 (日本のマネージメントが海外に自信をもって持ち込めるものでないことは確か。)

*中国人の嫌いな国。一番嫌いな国は韓国、二番目は日本、好きな国の一番はパキスタン、二番はロシア、三番は日本。(パキスタンには兵器が売れるから?三番目が日本とは不思議。歴史的にあれだけいじめておきながら、韓国が一番嫌いというのも不可解)

 ソウルでは、相手が中国人だと判ると、接客態度が悪くなる。店には(盗むな」と中国語で書いてある。(盗む中国人がいるからではないか?日本における外国人による犯罪では中国人による犯罪が一番多い)。

*中国人の個人主義はアメリカにより近似し、日本の平等主義、共同体重視主義はヨーロッパに近い。一方、他の中国人は「未来を見つめた持続的発展において日本は「人にやさしい」「省エネ」「エコロジー」「「調和と信用」の特色を有し、今後も世界から尊敬の目を向けられ、先頭を歩むであろう」と言う。

*2009年5月の「中国青年報」によれば、「GDPで日本を抜き、第二位になったといっても、中国は強大な国とはいえない。肥満しているだけ。病根を抱えてもいる。科学技術の創造性は弱い。高度成長は安い労働力と環境汚染という代価の上にある。「肥満」の高い代価としては環境汚染、奇病の発生、製品品質の問題などがしばしば発生している」と。中国人は未だに痰や唾を土に吐き、列には並ばず、街頭にゴミを捨て、なかにはベンチの板をはがして持っていってしまう人までいる。

*最近の政府報道は過度なナショナリズムには抑制をきかせ、適宜、タカ派的論調を出し入れし、基本的には国際社会との調和を重視しながら、国益追及の実をあげる路線を歩んでいる。

*「日本には幾つもの世界一がある」と言ったのも中国人。鉄鋼生産は第三位ながら、高給鋼材では世界一、研究開発費でGDPに占める割合も世界一、初等教育の就学率は100%、中等教育就学率は99.5%、いずれも世界一、ソフトパワー国家のイメージは世界一、森林面積も世界一、長寿も世界一。

 作者は言う「13億人の考えを一日で方向転換させることなどできるわけがないし、何を言われても考えを変えない人はどの国にもいる。だが、中国人の学習能力を過小評価すべきではない。日本への肯定的な報道は中国人一般の日本観を徐々に公正に、客観的なものにしていく作用がある。

 以上の内容は我々の対中国人観をかなり換えるであろう。

 ただし、本書には、中国の急速な軍事力の増強に関しても、尖閣列島についても、領海の境にガス田のヤグラを建てたことにも触れていない。

 また、出版が東北の災害後だったら、また違った発言もあったであろう。


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