古代アンデス・神殿から始まる文明/大貫良夫、加藤泰建、関雄二共著

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古代アンデス・神殿から始まる文明

「古代アンデス・神殿から始まる文明」
大貫良夫(1937年生)、加藤泰建(1946年生)、関雄二(1956年生)の共著。三人とも東大の教授、アンデス文明の研究グループのメンバーであり、研究チームとしてはおよそ50年間にわたって研究と現地踏査を積み重ねてきた。
帯広告:従来の文明観を変える発見の数々
2010年2月25日 朝日新聞出版より単行本初版 ¥1400+税

 古代アンデス文明は紀元前3千年から紀元前後までに栄えた文明であり、16世紀前後に至り、スペインの征服によってインカ帝国が滅亡するまで、南米の太平洋岸(ペルーを中心とした)に成立した古代文化の総体を指す。

 今日のペルーとボリビアの一部地域は中央アンデス地帯と呼ばれ、インカ文明に先立つこと数千年にわたる古代文化興亡の舞台。

 この文明は文明の形成期の基盤を従来の土器製作から神殿づくりを想定のなかに組み込むことを示唆するもので、そのためアンデス文明の初期成立を前3千年とする考えも導かれた。

 中米地域の「マヤ文明」とは全く異なる文明との認識は遺跡の発見によって判明し、インカ帝国は15世紀後半から16世紀前半にかけてアンデス一帯に栄えた王国だった。

 東大チームは、アンデス文明が北はコロンビア南部からボリビア、アルゼンチン北西部までを影響下に置いた歴史を遺跡研究により導きだせることを示唆、この地の古代文明史に関し、著しい貢献をしている。

 世界遺産の「ナスカ地上絵」や空中都市「マチュピチュ」など、インカ帝国の遺産は元々アンデス文明を継承するもので、スペイン人によって征服されるまで、ヨーロッパやアジアなどの旧大陸とはまったく異なる独自の文明が拡がっていた。

 東大チームが2008年までの50年間に発見、発掘した遺跡は20余、高地遺跡は15、これにより放射性炭素の年代測定とあわせ、より正確な編年表が作成された。

 ペルーの神殿の遺跡から発掘されるもののなかには北のエクアドル産の黒曜石、同海岸からはウミキクガイ(赤色をし装身具に使える)やカプトソデガイ(白色)、東のアマゾン奥地からはジャガーやメガネグマの骨、南のボリビアからはソーダライトと呼ばれる青い石などがある。

 当時の神殿建立に対する執拗なまでの熱意、宗教的なメッセージを込めようとの意図が強くあったことを作者らは指摘。

 この地域の古代史や文明に関心のある人には面白い本だが、学術書であることを知って読まないと退屈する可能性もある。


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