バスク人/ジャック・アリエール著

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「バスク人」  ジャック・アリエール(フランス人)著
訳者:萩尾生(1962年生)
1992年11月10日 白水社「文庫クセジュ」初版 ¥951+税

 私がバスク人に関心を持つようになったきっかけは司馬遼太郎の「街道シリーズ」だったと記憶するが、バスク人とはトータル300万人ほどの規模で、スペインとフランスの国境に存在するピレネー山脈の高地や谷に居住する民族であり、南北に、つまりはスペイン領とフランス領とに分断されて生活している人々であって、人々の口にする言葉が日本語に相似する部分があるとの情報に刺激された。

 バスク地方と呼ばれている地域は日本の四国よりひとまわり大きいサイズで、300万人の人口のうち、バスク語が話せるのは60万から80万だという。

 言語的にはいわゆる「印・欧語族」からは屹立した言語で、むしろコーカサス(カフカス)諸語のうちのグルジア語、北アフリカのベルベル語などに相似のものがあり、司馬遼太郎が言っていたように、日本語と同じく母音で終わることがが多いうえに、古いバスク語にはF音がないばかりか、V音はB音になるなど音声学の面でも同じ系統を感じさせるが、むろん、血統的にバスク語と日本語とは全く何の関係もない。

 日本でも、平安、鎌倉期には母親をFaFaと読んでいた発音が江戸末期にはHaHaに変化していたという話がある。

 その意味では、バスク語は欧州では孤立した、まったく異質の言語が、古語の一つとして屹立するように存在したといえるようだ。ただ、紀元前の時代から、バスク地方にはケルト人、ローマ人、イスラム人などが蹂躙、通過したこともあり、下ってはフランス、スペインに併呑されもし、現在では二つの国に分断されて領土化されている。

 ところが、血液型を調査したところ、バスク人にはO型が著しく高率で存在し、A型が僅かで、B型はほとんど存在せず、Rhマイナスの血液型の比率が世界中で最高率を誇るという。こういう血液分布はヨーロッパのどこにもない。

 ただ、外見的には、バスク人も今ではスペイン人やフランス人とほとんど変わるとこころはなく、バスク人に特有の、均質な容貌を見出すことはできない。数年前になるが、知己が毎年海外に旅をすることを知っていたため、その知己にバスクへの旅を薦め、帰国後の土産話を楽しみにしていたのだが、外見的に周辺の白人と変わるところはなかったとの報告だった。

 本書は、バスク語の特徴をかなり細かく説明しているほか、バスクの文芸、舞踏、料理、宗教、住居形態、文学、芸術、宗教、産業(古くは漁業と牧畜)などにも手を抜かず、広範囲に触れているため、細かい字が新書版ながら、200ページを埋めきっており、すべてを時間をかけて読む気力は、正直いって、なかったものの、バスク人について多少の知見を得たことで喉につかえていたものが降りた感じはある。


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