アインシュタイン伝/矢野健太郎著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「アインシュタイン伝」  矢野健太郎著
新潮文庫  1997年6月文庫化初版

 正直いって、内容にダブりが多く、文は下手、構成にも問題があるが、著者はアメリカのプリンストンで2年間をアインシュタインとともに過ごしたことがあり、その経験が類書にはない親近感を抱かせる糧となっていることは事実。

 物理学の歴史のなかでは地動説のガリレオ、万有引力のニュートン、相対性理論のアインシュタイン、量子論のフランクと物理学者は数あるが、この四人が代表になることが多い。それくらいの偉業を残したということだろう。

 アインシュタインが一般相対性理論を発表したしたのはドイツのベルリン・アカデミーにいたとき、第一次世界大戦のさなか、1916年だった。理論の当否を調べて実証したのが敵国だったイギリスの学者であったこと、しかもイギリス人のニュートンの理論をくつがえす内容のものであったこと、イギリス人がサイエンスの面でフェアーな国民性をもつことを学んだ。

 アインシュタインはユダヤ人であり、ために生涯に、ドイツ、スイス、アメリカの三つの国籍をもった。アメリカのプリンストンにある「高級研究所」にいたとき、「もしドイツが原爆の製造に成功したら、世界は恐慌をきたす」と、ときの大統領、ルーズベルトに進言、結果としてマンハッタン計画がオッペン・ハイマーの主導でスタートした。そして、アインシュタインの「E=mc2」を地球上の、こともあろうに、日本の広島と長崎で証明することになった。 わずかな質量が膨大なエネルギーに転換し得ることは太陽が数十億年ものあいだ巨大な熱を輻射し続けていることでわかっていた。

 アインシュタインの言葉として心に残るのは「もし宇宙からすべての物質が消え失せれば、時間も空間も消え去る」という言葉と、もう一つは「国際連盟をつくっても大国によってどんな行動も正当化され容認されるための機関になりはてるであろう」という言葉である。

 第二次大戦後にできた「国際連合」も、とくに冷戦後、アメリカによって同じような憂き目に陥っている。そして、「あなたは神を信じますか」との問いには、「この宇宙を神はどうやって創造したのか、それをつきとめたい」と。さらに、「神はサイコロを投げない」という言葉は記憶になお新たなものがある。

 「なぜ、ユダヤ人はドイツのみならず西欧一般で嫌われていたか」という疑問がかねてよりあるのだが、この疑問は本書を読んでも氷解しなかった。


前後の記事

«  (前の記事)

(次の記事)  »

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ