ボート/ナム・リー著

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ボート

「ボート」  ナム・リー(Nam Le/ベトナム系アメリカ人)著
訳者:小川高義
裏表紙広告:父母に抱かれ、海を渡った
帯広告:綿密な想像力を細部にいたるまで働かせて、はるかな世界と人とをありありと実感させる。才能というしかない。(タイムズ評論)
2008年ニューヨ-クにて初版
2010年1月30日  新潮社クレストブックス初版 ¥2300+税

 作者は1978年にベトナムで生まれはしたが、すでに戦後であり、両親は幼児だった彼を連れボート難民となってオーストラリアに移民、しがたって家庭ではベトナム語がしゃべられていただろうが、作者の生活は白人社会で送られ、かつ言語は英語によるものだったことを理解しておく必要がある。

 長じては書くことを糧にしようと、アメリカのアイオワ大学に行き、アメリカに帰化もして、作家活動に邁進、ベトナム人が書く著作という面で関心を惹かれて読むと、すこし違うような気がする。

 むしろ、一人の若者のありのままの才能、個性、感性をこの短編集を収めた書を通じて触れるだけで充分にこの作者の将来性も想像できるように思う。

 ペイソスも独特だし、話のテンポも、人物描写にも他との比較を拒む個性があり、唐突なテンポの変化などもこの著者特有のもの、そこに必然性を感じない読者にはやや苛々感が残るかも知れない。

 数々の賞に恵まれた背景には、平均的なアメリカ人とは異なる繊細さと、感性を意図的に強調したことが成功を導いた理由ではないかと思われる。


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