白夜行/東野圭吾著

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書評:ためいき色のブックレビュー-白夜

  「百夜行」  東野圭吾(1958年生/江戸川乱歩賞、日本推理作家協会賞、直木賞、ミステリー賞を取得)

  2002年5月29日 集英社より文庫化初版   ¥1000+税

 本書は第一章から第十三章まで続く超長篇のサスペンス(800ページを超える)だが、構成、結構、展開はいずれも緻密に計算された内容で、内容には現代社会が孕む問題を巧みに挿入しつつ章ごとに登場する人物を変え、事件を複雑にしながら、これを技量にまかせてまとめ、最終段階に至って読者をあっと言わせようとの魂胆が秘められている。

 とはいえ、そうした作者の考える裏舞台が読み進むほどに見えてきて、作者の自己顕示欲につきあうのに、貴重な時間を大量に奪い、疲労困憊させる資格があんたにあるのかと、段々に腹が立ってくるのを抑えがたかった。

 自分の頭脳の冴えを誇り、さかしらさに溺れ、読者への配慮に欠けた、これみよがしの作品には、私のように、世間の評価とは異なる不快を感ずる読者も存在することをわきまえて欲しい。

 作者が頭が良く、内容が複雑であれ、細かくあれ、巧緻に纏め上げることの出来る才能を身にしていることは重々承知してはいる。

 「解説」にあるような作品への賛美と才能への嫉妬に終始するだけの読者ばかりでないことを認識して欲しい。

 とはいえ、私の知人にはこの作家が大好きな人もいて、ドラマ化された「百夜行」も見たが、原書の方がずっと面白かったと評していたことを追記する。

 


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