中国人とお金/阿部享士著

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中国人とお金」  阿部享士 (1965年生/アナリスト/著者の妻は中国人)著
副題:なぜ日本企業は中国で失敗するのか?
廣済堂新書 ¥800+税

 著者は日本人だが、配偶者は中国人、居所は上海で、香港、マカオなど中国とゆかりの深いエリアでの滞在経験は長期におよび、中国人を語る上で、あえての欠点はない——というのが本書のトップに著者が書いていること。

 鄧小平が市場経済を持ち込み、「金持ちになれる人から金持ちになろう」と言った瞬間から、中国人は本音で生きることが許された。もともと、なんでもありで、金銭を入手できる機会さえあれば、遠慮会釈なく行動する国民で、フェアでないことも身につまされることも恥とも感ずることなく生きられる、それが中国人。

 中国人のそういうアンフェアなやり方はいずれ世界中から嫌われ、折角伸びている経済にも悪影響を及ぼすだろう。

 中国人をしてこのような性格にしたのは偏に人口の多さである。インドを別格として、13億の人間を治めた国が中国以外にはない。それがどういうことかを、だから、理解できない。とはいえ、かれらのパクリは商品をそっくりパクっていないから、しばしば間違いを犯す。食品には毒が入っていたりもする。

 中国人は今や世界に散っている。アメリカ、カナダなど多くの中国系がいるほか、欧州にも、豪州にも、東南アジアにも中国人はいる。東南アジアでは、それを華僑と呼んでいる。中国本国で得た膨大な賄賂など外国につくった銀行口座に振り込む智恵をもっている。言うまでもないが、中国製品は世界中に散っている。

 科挙のテストに拘泥するのも、目的は許認可権のある公務員になるためで、国を産業廃棄物で汚さないためではなく、狙いはアンダーテーブルだ。だから、所属する機関に対し僅かにもロイヤルティはもっていないし、いわんや外国の企業に職を得たとしても、社のものをかっぱらいこそすれ、ロイヤルティは全くない。デモから暴動に変化し、日本関係の店舗や企業が破壊対象になれば、狙いは品物の窃盗にころっと変わる。

 端的に言って、この著作は中国人の物欲、金銭への執着を書いたものだが、中国人を妻にもつ著者の陥りやすい欠点というべきか、双方の国に対し悪口にせよ評価にせよ、中途半端であり、いわば隔靴掻痒(かっかそうよう)の感が強い。

 *中国では、お金の稼ぎ高が人の価値を決める基準。どうやって入手したかは問われない。現実には、中国の経済を謳歌しているのは全体の1割に過ぎない。

 (その点はアメリカも同じレベルだが、私たちが関心をもつのは対ウィグル族、チベット族への配慮である)。

 *中国人が稼いで得た金を国内の銀行に預けないのは自国の銀行を信頼せず、外国の銀行、スイスやシンガポールの銀行のような身元を外部に漏らさない銀行に預ける。

 (背景には、得た金の大半が賄賂のような犯罪がらみだからであろう、日本人にも、同類の人はいる)。

 *日本人は酒の席での失態に寛容。醜態を曝しても酒に酔っていることに原因をもっていくし、社会もそれを認めている。(日本人社会独特のマナーというべきか、理由としては酒に弱い人が日本人に多いという事実がある。一気飲みの強制なども、誰もがアルコールに強かったら、やっても意味がない)

 *中国人はなにかと言うと「中国、4千年の歴史」と言うが、それを鼻にかけることに意味があるとは思えない。しかし、長い歴史を背負っている意識が中国人らに独特の矜持を生み、生意気千万な態度をとらせる。(だいたい、夏、殷などという時代の歴史があるんだったら、そういう歴史の実態を虚偽や誇張なく説明して欲しい。歴史が長いといって、エジプト人やアラブ人がそれを鼻にかけるとは聞いたことがない)。

 *中国人は給料の多寡で、すぐ転職する。日本式の人間教育には根本的に合わない。

 (著作権の侵害、産業廃棄物の垂れ流し、毒入りの食料など、大国に住む人間とは思えぬことを平気でやるのが不可解。かつて、上海に行ったら、「電信柱に手を触れるな」と日本人の間では言っていたそうだ。中国人は鼻は引っ掛けるし、痰は吐くし・・・・」ということだった。経済の向上が人間としてのマナーにまで及ばないのか?)

 *日本の現地法人では何年経っても、トップクラスは常時日本人で埋めていて、現地人を昇格させない。(これは昔から日本人の経営手法だった。JAL、JTB、ニコン、JRなどのトップは今でも日本人なのでは?) 

 *日本人は国旗を掲揚しない、国歌を歌わない、外国とのスポーツ時だけ応援する。中国人はどんな分野であれ愛国心を熱烈にもっているし、示しもする。(日本とサッカーをやって負けたとき、日本人選手が乗るバスが囲まれた事件があったが、あれはヤクザ的な行為というしかない)。

 *日本人は経済成長とともに海外に多くの人々が旅行をするようになったが、観光屋が見せたがるのはブランド品店を中心とする土産屋ばかり、だからいつまで経っても、日本人は世界を理解しないし、できない。

 (ツアーパッケージの料金は安い。年間の送客量がものを言い、飛行機往復、ホテル、バスなどなど安く仕入れることができるところにメリットがある。そのためには客にも土産屋にぜひ行ってもらい、コミッションを得ないとやっていけない。この種の手法は香港から始まったことも知っておいた方がいい。もし、自らが関心をもつ対象にだけ観光目的を絞りたいのなら、個人で、独力で行けばいいだけのことだ)。

 *悪平等は不平等よりなお始末が悪い。だから、経済格差もある程度は必然として受容する。

 *円高は21世紀の初頭に吹いた「神風」。日本にとっては、得がたいチャンスを得たことになる。

 *いずれ日本人の1割が海外で仕事をする時代になる。

 (前にも書いたが、13億の民を治めたことのある国は中国以外にはない。ただ、「なんでもあり」といった風潮には納得がいかない。国交回復直後には上海、北京に二度、シルクロードに二度行ったが、いま行ってみたいとは思わない。金だけが人生というような貧しい知性の土地とは縁をもちたくない)。


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