イギリス人の格/井形慶子著

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イギリス人の格

「イギリス人の格」  井形慶子著
集英社刊 2006年6月初版  単行本

 前回「やっぱり、イギリス人はおかしい」を読んで、意図的にイギリス人に拘わる本を読んでみた。

 本書はイギリス人礼賛をこととし、と同時に、日本人には耳の痛い話が多い。若干、独断も偏見も見受けられるが、概して前向きにとらえる姿勢と、長年のイギリス生活から得た知識には感銘を覚えた。

 以下は、感銘を受けた点、学んだ点、などに合わせ、私が個人的に思った部分などをまとめたもの:

 「アウシュビッツがポーランドにあり、韓国人より日本人の訪問が少ない。現在、国立「オシフェンチム博物館」に展示物が置かれている」。

 (この種の残虐行為が行われた土地では、例えばヴェトナムでは赤子を大きな瓶にホルマリン漬けにして見せたり、ポルポトの残虐な殺人行為を多くの骨を曝すことによって見せ、二ューヨークワールドセンターもなんらかの記念碑とともに、その残虐行為を忘れずに後世に残そうとしている。広島、長崎も例外ではない。それらモニュメントを見に行くか否かはそれぞれの人の勝手というもの。ただ、こうした悲惨な事実を歴史から消さずに残そうという熱意にも拘わらず、世界ではでいまも殺し合いが行われている。モニュメントは地球上に増え続けるだろう)。

 「思い患うことなく、まず行動せよ。それも最も気がかりでいやなところからはじめよ」はなにもイギリス人の発想によるものではなく、私個人もそうやって生きてきた。

 (そのイギリス人が平気で嘘をつき、騙されるやつが悪いと公言する事実には納得できないものと同時に、イギリス人の「格」というものへの疑問を感ずる。だいたい、イギリスを「Great Britain」などと仰々しい言葉で呼ぶこと自体尊大きまわりない)。

 「イギリスのロンドンが世界の億万長者が居住する街ランキングの第一位、だたし、そうしたなかにロシア人、アラブ人などが入っている」。

 (これがイギリスにとって恥とはなっても、どのような自慢や効果に結果するのかよく解らない。だったら、モナコと大差ないではないか)。

 「30代、40代の女性の給与比較で、イタリア、ドイツ、フランス、スペインに差をつけられて最低」。

 「持ち家比率:日本61%、アメリカ69%、ドイツ43%、イギリス71%。」

 (地震のないイギリスと10%しか違わないことはむしろ評価に値する。また、イギリス人の場合は、古い家の改造、改修に主眼を置いているケースが多い)

 「粗大ゴミの販売をチャリティにすることで、年間、全国で1、000億を越す売り上げがまるごとチャリティに渡されるため無税、消費税なし、テナントを貸したオーナーも不動産一部税免除がある」。 

 (資本主義の欠陥である僅かな富者と多くの貧者を救う道は唯一、富者に重税を課することだ。他人から施しものを受けることの屈辱に耐えられない人、死んだほうがましだと考える人も世の中には少なくない)。

 「すべての人間は平等の価値がある」

 (おためごかしにすぎない、イギリス人がいう平等も同等もイギリス人同士、あるいは白人の社会での言葉であって、かつて植民地化した土地の人間はもとより、日本人もそのなかに入ってはいないし、オランダやアイルランドに対しても人間扱いしていない)。

 「日本人は迷ってばかりいる」という考えは人によって異なるもので、偏見である。

 (だいたい、日本企業や官僚の問題解決方法は合議制、衆議製、稟議書回覧制、ひいては無責任体性にあるが、個人意志決定は別の次元)。

「個人的な得意分野」を「PERSONAL SKILL」というのは面白い。それなら、確かに無資本でビジネスが成立する。(スミスやケインズを生んだ国とは思えないが)。

 「ポーランド人が自宅を民宿にする」話が出てくるが、ポーランド人が経営する民宿にあえて泊まる度胸は私にはない。先年、ルーマニアに行った知己が日本人が経営する民宿に泊まったが、バスにしろ公共機関しろ、人的サービスに不慣れなため、愛想はなく笑顔ひとつなく、怖かったといっている。タクシーなどに一人で乗ったら、どこに連れていかれるかわからないから避けるようにとは現地の民宿経営者の言葉である。だいたい、ポーランド人がEU域内どこにでも行けるようになったため、あちこちから高級自動車が盗まれているという報道もある。

 「日本の若者が株を売買する企業の実情さえ知らぬままデイ・トレーディングを行うのは、アメリカ型マネーゲームの真似」というが、日本の若者はそこまで阿呆ではないし、アメリカに対しても少し失礼ではないかという気がする。アメリカのご婦人方は週に1回集まって、銘柄ごとに研究会を開いているところもある。

 「ホリエモンがIT関連の転落者代表といわれ、日本社会を金、金、金という、さもしい社会へと誘う危険信号」のようにおっしゃっているが、1T関連はいまや避けて通れなほどに社会に浸透してしまっている。IT関連を軸に、新しい社会に応じた新しい社会的ニーズを発見し、これを新しいビジネスに結びつける手法を考察することを非難するのはお門違いで、ホリエモンの問題とは別。

 「イギリス人は愛がなくなると学童期の子共がいようと、家のローンが残っていようと、それに拘泥することなく離婚し、住居も変えてしまう。

 (それが個人主義の行き先ですか? 子共への愛情というものを持たないのがイギリス婦人のキャラクターですか? それがまた、イギリス人の格というものですか? 個人主義というものは自分の子共を犠牲にすることですか?)

 「EUは成長ホルモンを使っているという理由で、アメリカ産牛肉の輸入を全面的に禁止している。

 (日本でこのことが問題になったことはない。日本政府のチェックがいい加減?)。

 インドのガンジーは「世界中の貧しい人々を救うのは大量生産ではなく、大衆による生産」であると言ったとあるが、説得力のある言葉だ。

 「イギリス人が在宅時間が長いのは気候、風土のせい。緯度が高いため、冬は大陽が低く、空も暗い。低温で、降り続く冷雨、冬など午前九時にならないと明るくならず、午後三時には暗くなる。家にいて愉しむ方法を彼らは考えた。それがチェスであり、クイズであり、ジグソーパズルであった。いまでは、日本で発明された「SU-DOKU」に夢中らしい。

 「イギリスには歳相応の服装、格好という感覚はない」(ババアが赤や黄色い服を着て平気というより、周囲がそうだから違和感がない。アメリカも同じ)

 「日本女性を妻とする日本在住のイギリスの夫が、妻の親が亡くなったとき、骨肉相争う遺産騒動に出遭い、「これは話し合いじゃない。死人の金に群がるハイエナだ」と慨嘆。

 移民してきたトルコ人やギリシャシャ人がイギリスで子共を生み、当初、これにどう対応すべきか、誕生地主義ゆえに、相当に迷った歴史をイギリスだけでなく、フランスもドイツも経験している。結果的にそれが少子高齢化への歯止めになり、いかにも異文化を吸収しているかに見えるが、過去に大量の現地民を殺害した負い目があっての慈善行為であって、このような実態と日本の少子化問題とを単純比較するのはお門違い。

 「大英博物館は年に四回、14歳までの子共と母親とを館内に1泊させ、歴史と文明とを肌で体験させる企画を1998年より始めた」というが、展示品はすべて、いってみれば、盗品である。古い文明国からの許可のない時代の持込みで完成している。それはなにも大英博物館だけではなく、ルーブル、故宮博物館、サンクトペルグ美術館、ボストン・ミュージアムでも大差ない。

 もっとも、盗んだ経験のない国(盗むことできるほどの国力がなかった国)の博物館の展示品が内容的にお粗末なのはどの国にも共通している。

 さいごに「EUの目的を発言したのはイギリスのチャーチルであり、目的はドイツが再び戦争を仕掛けないように見張っていくことだった。二度とヨーロッパを戦場としないという決意」であり、チャーチルがいまだに尊敬される理由がよく解った。とはいえ、EUが成功するかどうかは判らない。ソ連邦に所属していた東欧諸国がトルコを含め続々とEU入りを希望している。西ドイツが東ドイツと統合に成功したために、ドイツの経済力は急落した。

 「人生が解っている、イギリス人の行き方、考え方は正しい。そこにいくと、日本人はおかしい」という著者の姿勢がふんぷんと匂ってきて、むかつきを抑えられない。日本のイミグレオフィサーの無知や国際感覚の欠落が指摘され、これで「テロが捕まえられるのか」という言葉があるが、あなたは世界のイミグレを全部知っていて、ものを言ってるんですかと反論したくなる。確かに、日本のイミグレオフィサーのトロさ、英語の下手さ、国際感覚のなさには同調するが、もっとひどい国は幾らでもある。


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