逸脱/ルーチェ・デーラモ著(その2)

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「逸脱」 ルーチェ・デーラモ(Luce d’Eramo/イタリア人/1925年生)著
原題:Deviazione
訳者:斉藤ゆかり
帯広告:第三帝国での女工を志願した少女ファシストの自伝小説
1979年に、本国イタリアでの出版と同時に、フランス訳が出された
1997年11月25日、作品社より単行本初版  ¥3500+税

 

書評:その2

 本書は先の予告で紹介した通り、ティーンエイジャー時代に、ドイツにおける過酷な社会状況、ナチによる強制収容所に関し、風聞で知ったことを、自らの目で実態を確かめ、状況を確認したいという欲求抑えがたく、単身ドイツに乗り込み、逮捕されて収容所に入れられたり、脱走してなおドイツに居残り、終戦までドイツに居住したイタリア女性。

 後日、その時の体験をまとめたのが本書であり、イタリアでの出版は1979年と遅い。

 評を書くまえに、言っておくが、最後まで読むにはあまりに饒舌なおしゃべりに終始、退屈きわまりない一書としうしかない。訴えるものも魅力もない、ただの女のおしゃべりが多いことが、本書を必要以上に分厚くしているだけではないかという印象。

 本書の、いわばクライマックスは、連合軍による爆撃で家の下敷きになった人を救おうとしているときに、壁が崩れ、本人が下敷きになり、背骨が押しつぶされ、肩は外れ、肋骨も腰も砕け、爆発による火傷が14箇所に及び、病院の医師はもとより看護士のだれもが助かるとは思えない状態だったのが、奇跡的に回復、痛みをとるためのモルヒネによる治療も途中で断り、積極的に努力した結果、車椅子の利用は避けられなかったものの、見事に回復、立ち直ったという部分。

 とはいえ、車椅子から体を離すことはできず、大小便は管を利用して外に出す、管が壊れれば垂れ流しという状態という屈辱もあった。また、車椅子に乗っていても、背中に負担がかかるため、猫背にもなった。

 作者は自分の体験をこと細かに書いているだけで、そこに高邁な思想があるわけでもなく、同じような立場の人間との饒舌なおしゃべりに終始するだけで、そうした場面が延々と連続するため、半分読むのがやっとで、放り出す羽目になった。こうした本書の内容が出版社をして上梓することに逡巡させ、戦後30年以上経っての本国での出版に結果したのではないかと推量したが、邪推かも知れない。

 終戦後、アメリカ行きを希望するが断られ、ロシア行きには成功するが、この作家がなぜ終戦後も故国に留まらず外国移民を望んだのか不分明。奇矯な女性という印象が強い。

 作者の意地の悪さ、執拗さに絞れば、確かに、一般のイタリア人の平均を「逸脱」している。


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