ロシアの旧秘密都市/片桐俊浩著

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ロシアの旧秘密都市

「ロシアの旧秘密都市」 ユーラシア・ブックレットNo.153 片桐俊浩著
東洋書店より2010年6月20日初版  ¥600+税

 タイトルや表紙の写真からはチェルノブイリの原発事故についても触れているのかと思ったのだが、そうではなく、本書はソ連邦時代にほぼ全国に散在していた軍事機密都市(44都市)について書いた内容。

 一般的な軍事工場はもとより、ミサイル研究、核兵器開発などを含む原子力産業が主だった対象で、当初はロシアが歴史的に得意とする「囚人(シベリアに収容された日本兵を含む)を駆り出しての」事業だったものからエリートが携わる事業へと変容、その間、研究対象が「隕石の軌道変更」、「ミサイル迎撃」、「石油の湧出促進」、「油田やガス田の火災消化」などへと広がっていく過程も説明されている。

 東西冷戦時を含め、都合124回に及ぶ産業目的の核爆発実験とあわせ、人工衛星「スプートニク」の製造も行なったものの、原爆保有を急いだあまり、杜撰な建設計画を強行した結果、事故が多発しもした。

 ソ連邦崩壊後、秘密都市の大部分は機密が解除され、地名も公表されたが、ロシアの旧秘密都市に特有なのは国家機密の漏洩を防ぐ目的で都市をまるごと秘密にしたり閉鎖したりする点。

 作者は最後に、「科学研究の成果に対する過剰な秘密防護措置は長期的にはそのような政策を選択する社会に不利益をもたらす」と指摘し、「国民の移動、情報の流通を制限した末に、社会的進歩が阻害された」と述べているが、報道規制も情報統制も今尚この国のお家芸だし、スパイ行為も過去の秘密主義の延長線上にある。


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