物理学者はマルがお好き/ローレンス・M・クラウス著

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「物理学者はマルがお好き」 ローレンス・M・クラウス(Lawrence M. Krauss/1954年生/アメリカ人)著
訳者:青木薫
解説者:佐藤文隆(理論物理学者)
原題:Fear of Physics: A Guide for the Perplexed
1996年に講談社より「物理の超発想・・・」というタイトルで単行本初版
2004年5月20日 早川書房より文庫化初版 ¥800+税

 「マルがお好き」の「マル」とは球体のことを指し、対象が何であれ球体に置き換えて考えることで問題の解を簡単に把握することができることを意味する。

 たとえば、牛の体を「普通牛A」と「スーパー牛B」の2頭を想定、BはAの2倍のサイズがあるとすると、体積比は立法メートルで2の3乗(2X2X2)だから、Bの体積はAの8倍になる。そして、表面積は2の2乗だから4倍になる。つまり、BはAの8倍の体重を4倍の皮膚で支えなければならず、球形の牛をどんどん大きくしていけば、いずれ皮膚は圧力に耐えきれず破裂する。

 上記に関し、訳者は「使える道具で結果をつかみとる」と説明、解説者の佐藤文隆は「ありのままに見ないことで本質に迫る」と説明している。

 物理学は難しい。だから、物理学を扱う本書が難しいのは当たり前とは思いつつも、ときに頭を抱えた。書かれた対象は多岐にわたってもいるが、以下は「なるほど」と思わされた、ほんの一部を列記する。

*物理学には「長さ、時間、質量」という三つの基本的な次元しかない。そして、次元という観念ほど重要なものはなく、物理的に観測可能な量を特徴づけてくれる。

*物理学にとって数学は言葉。

*自然界のルールを説明することは物理学の扱う範疇ではあっても、そのルールが使われている理由までは判らない。

*ブラックホールは表面の重力場があまりに強いため、内部にあるものはたとえ光であろうと逃げ出すことはできないという解釈のため、ブラックホールは宇宙空間に存在する暗黒部分との理解を生んだが、スティーヴン・ホーキングは1974年に、「ブラックホールからも光は漏れているため、決して真っ黒ではない」ことを示した。

*ニュートンの万有引力の発見を可能にしたのは、一つはガリレオの「等速落下の法則」と「放物線理論」であり、もう一つはケプラーの「惑星は太陽を焦点の一つとする楕円軌道を描く」と、「惑星の速度は太陽からの距離の平方根に反比例して減少する」という理論からである。

 (ガリレオの「物体の落下速度はその物体の質量に比例しない」は地球上の大気中のような空気摩擦があり、重力のあるところでは羽毛とガラス玉を同時に落下させても等速落下はしない、真空状態の場が得られれば可能。羽毛とガラス玉の落下速度が同じであることが証明されたことがTVの番組であり、私はたまたまその画面をで見て納得した)。

 *物理学の世界では、むかし誰かが発見した定理に依拠して新しい定理が発見されることが多々ある。物理世界に真理はそう沢山は存在しないから。

*宇宙の90%は暗黒物質らしいという観測結果は現代物理学の最もエキサイティングな謎。

*ニュートン力学は完全な決定論であるのに対し、ドイツのハイゼンベルグの量子力学における不確定性の発見は不確実であることを前提としている。

*電磁気の理論を完成させ、その理論を使って光の存在を「予測」したことはジェイムス・クラーク・マックスウェルがなしとげた19世紀最高の知的偉業。

*アインシュタインは光の奇妙な振る舞いに触発されて、空間と時間との新しい関係について考えをめぐらし、相対性理論にたどり着いた。量子力学の創設者たちもまた波と粒子とがときに同じものとなる可能性に対処すべく小さなスケールでの物質の振る舞いを支配するルールをつくりあげた。そして、20世紀後半には、ついに光の量子論が完成された。

*もし既知の粒子の質量がほんの僅かでも今と違っていたら、我々の知るような形での生命はあり得なかったであろう。我々の体をつくっている原子はすべて、はるか遠くで爆発した星の炉で生み出されたもの。

*星同士の衝突はひとつの銀河では100万年に1度しか起こらないが、全銀河すべてをあわせれば、目に見える宇宙のなかで年間に何千回も起こっている。

*重力から脱出するのが容易なのは、普遍的に存在する「エネルギー保存の法則」が成り立っているからで、脱出するロケット自体の重さや搭乗する人間の体重などを配慮する必要がない。

*物理学に未来があるのは現在の理論が不完全だから。我々は宇宙に存在するすべてを知悉することは永遠に出来ない。我々は将来にわたって、知り得ることを知っているに過ぎない。

 宇宙に関する書籍はいつも頭痛の種になるが、それでも読むことをやめられない。


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