女(ファム)/藤田宣永著

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ファム

「女(ファム)」 藤田宜永著  新潮文庫
2003年単行本初出  2006年3月文庫化  ¥438
帯広告:わがままで、奔放で、美しく、淫ら。

 舞台はフランス、パリ、六つの短編が収められていて、どの短編もフランス人の女性名がタイトルという変わった本だが、読後感は一言で表現すれば、「酔ってしまった」といったところか。

 作者は「あとがき」で、自分が23歳から30歳までパリに滞在したときの見聞や体験をベースにはしているが、決して自らの体験記ではないと断っている。とはいえ、パリの娼婦や女と昵懇(じっこん)の関係をもったことのない男に書ける内容ではない。

 とりつくしまのない陰影、いびつで退廃的なムードがたまらなくいい。知らぬ間にそれぞれのストーリーにどっぷり浸っていて、あっというまに読み終えてしまった。

 淫らな性交渉の場面が多く描かれてはいるが、性的な刺激を読み手に伝えようという意図は感じない。それは、たぶん、性描写がアメリカのポルノ映画さながらに機械的で、創作の感が拭えず、日本人に特有の陰湿感や恥じらいのムードが欠けているからかも知れない。はじめから、読み手の下半身にずしんとくるような内容を求めて書いてはいないという印象。

 ただ、人間、ことに女を見る作者の目線が際立っていて、この作者の心の襞(ひだ)を通してしか表現し得ない特異性、独自性に痺れた。

 公衆トイレみたいにどの男のペニスでも受け容れる女のことを、「汚れた靴底をこすって拭くために用意された足拭きセットみたいな女」と表現したところが、記憶に残った。ただ、私には、ゲイ、オカマ、ホモ、ニューハーフ、シスターボーイ、それぞれの違いがいまだに判らない。というより、関心がないから、調べようともしない。尤も、日本の女性作家は日本の女がすぐ股間を開いて男の乗せるところから、そういう女を「イエローキャブ」(アメリカのタクシー)と称したことを思い出した。

 この作者の著作としては、以前に「虜」を読んだことがあり、その本のほうがはるかに淫猥で、刺激的だったこと、感銘を受けたことを想起した。


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