江戸幕末滞在記/エドゥアルド・スエンソン著

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「江戸幕末滞在記」 エドゥアルド・スエンソン (Edouard Suenson/デンマーク人)著
長島要一訳  講談社学術文庫

 デンマーク人がフランス軍隊に入って幕末の日本にやってきた。若く、思考が柔軟で好奇心にあふれた西欧の青年の目に、幕末日本がどう映ったか。

 僧侶がいやに横暴で、人様の玄関を訪れて物を乞い、応ずるまで大声を挙げて経を読む強請場面に驚いているかと思えば、大人が子供を可愛がっている図がいたるところで見られたことにも、どの子供も木造の玩具をもって遊んでいることにも驚いている。

 人糞を尿に溶かして肥料とし、そのために畑の臭気に堪えられなかったというエピソードもある。

 日本女性が混浴をいとわず、自然にもらった体を隠す必要はないと言い張って、意見を異にする宣教師らを困らせた。ただ、日本のある身分階級から上の男は例外なく「酒好き」「女好き」というイメージは妾(めかけ)をもっていたからであろう。

 茶店での出来事に、田舎侍がはじめて目にした西欧人に「お近づきになりたい」と積極アプローチ、和気藹々に宴会が進行、「日本人も西欧人も変わりはない」という結論に至ったらしい。

 そういう逸話のある同じ時期、新撰組が京都で跋扈していた話は相容れないように思われ、私にはピンとこない。だから、同じ作者の著した「薩摩の侍がイギリス人を殺めた生麦事件」も解せない。時代の先の変化を読む者と、旧来の体制に固執する者との相克の結果は見えているが、われわれが過去の人間を脳裏に長くとどめておくことにもまた別な驚きがある。

 ちなみに、作者は明治以後、新政府と交渉し、日本、上海にはじめての海底ケーブルをべースとした電信を開通させた立役者である。

 デンマークと日本との繋がりがこんなところにあったことを知ったことは幸せだった。 また、本書に出遭うまで、デンマークなどという国に興味も関心もなかったし、知識といえば「牧畜産業」くらいを真否は不明ながら想像した程度。歴史書をひもとくと、過去にはデンマークがスウェーデン南部とノルウェーを支配し、イギリスにまで侵略した史実のあることを知って、また驚いた。

 現在のデンマークは人口も少ない小国だが、福祉国家として成長、経済も悪くないと仄聞する。


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