文明の憂鬱/平野啓一郎著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「文明の憂鬱」 平野啓一郎著  新潮文庫

 1999年、京都大学在学中に「日蝕」を世に問い、いきなり「芥川賞」を受賞、三島由紀夫の再来と騒がれた逸材。とはいえ、「日蝕」は難しすぎ、この本を最後まで読了できた人はあまり多くはない。私自身、途中でギブアップし、放り出してしまった。もし、デビュー作が売れなかったとしたら、それは作者が利口で賢すぎたためか、作品の内容が理解されなかったかのいずれかであろう。

 本書は2000年から2005年の5年間(著者が25歳から30歳まで)に国内外で起こった事件、事象、現象に対し、この青年がどう考えたかが、項目として掲げられた多くのテーマのもとに、簡明、かつ明快に述べられたエッセイ。

 内容はときに非凡、ときに奇抜、字句の選択はシャープだが、ときに突出、ときに難解、哲学的な思考に嗜好が偏向しているきらいは否定できない。が、内容のなかには、蒙を拓かれることが少なからずあり、と同時に、1975年生まれの、いかにもIQの高い青年がなにをどう思惟し、思念するかを理解するうえでは、これ以上にない明察の一書。

 日本の将来に僅かながらも灯火をともす日本人の一人と確信する。

 少なくとも、本書は「日蝕」よりははるかに読める範疇にある。


前後の記事

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ