べっぴんぢごく/岩井志麻子著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

べっぴんぢごく

「べっぴんぢごく」
岩井志麻子(1964年岡山生まれ)著  新潮文庫

 この作家の作品に接するのは、どうやら初めてのことらしいが、表紙の女性の顔にも目つきにも、いかにもエロっぽく、それでありながら陰険な表情が窺われ、読んでみようかという気になった。

 作家は舞台を自分の郷里である岡山の北にある寒村、竹井村に置き、明治時代から平成に至るまでの、ある分限者の女の家系図のようなものをストーリーにしている。

 たぶん、岡山に特有のことだったと思われるが、各家に「乞食柱」というものがあり、乞食が入ってよい場所を示すもので、そこで食事を与えたり、何かを恵んだりする場所だったらしいが、ときにはその場で家の女が犯されるなどということが起こることが本作品では重要なポイントとなっていて、ホラー小説としての原点になっている。

 しかも、主人公の女性を含め、この家系には、一般の人が見えないものが見えるという特殊能力が付与され、いわば特殊効果を狙っている。さらには、主人公をはじめ、タイトル通りの別嬪、美貌の女性が隔世遺伝するという不思議があり、いずれの女も当たり前の相手男性の子を孕まないという設定で、それが「宿業の美貌」とか「禍々(まがまが)しい血統」とかいう言葉で粉飾され、死霊がとりつくなどという話までかぶせて、このホラー作品を仕上げたという印象がある。

 今日でも、岡山の現地には「乞食柱」というのが存在するのかどうかは知らないが、一般の日本人には知られていない僻地の慣習みたいなものをベースに物語を展開させているわけで、そうした化石的な事物、事象に縁のない読者としては、正直いって、ピンとこない。

 「血塗られたエロの家系符」といった印象とともに、「創りすぎ」、「いじりすぎ」の感がある。


前後の記事

2 Responses to “べっぴんぢごく/岩井志麻子著”

  1. withyuko より:

     といえば、岡山!グロテスクなホラー!が思い浮かんで、私は苦手ですー。「ぼっけえきょうてえ」という作品を読んだ時には、怖くてその本を持っているのもイヤでひとにあげちゃいました!
     Hustlerさんは、いろいろなジャンルの本をよまれるのですね~。ほんとに偏りがなくてすごいです。

  2. hustler より:

    >withyukoさんへ
     われながら、色んなジャンルに手を出しているなとは思うんですが、基本的に好きなのはノンフィクション系、学術系(宇宙物理系、生物学系、地球物理系)、歴史系、ゲテモノ系などですが、ホラーもの、サスペンスものも、一般的な小説も創りもであることを感じさせないレベルであれば、喜んで読みます。最後になりましたが、いつもぺタありがとう

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ