オランダ紀行/司馬遼太郎著

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「オランダ紀行」 街道をゆく35
 司馬遼太郎作  朝日文庫

 本書を通じ、かつて日本人がオランダを唯一の窓口として西欧文明を知り、想像し、学んだことをあらためて認識する機会を得た。

 当時、日本の人口は2千万、オランダ(面積は九州くらい?)は2百万足らず、イギリスが5百万、フランスが2千万といわれる。

 オランダは干拓事業で国土を拡大した「土木を得意とする国」、それでも急峻な地形をもつ日本へのアドバイスには苦労したらしい。「日本の川は川ではなく滝である」といいつつもコンクリートを使わない自然への配慮を教えたという。要するに、日本は山国だから、川は小さいがほとんどが急流だという認識である。セーヌ川やライン川に比較したオランダ人の目が彷彿とする。

 オランダ人は「ドイツ人は心が狭い。海を見れば治るよ」と教え、かつ「ドイツのユーモア書とベルギーの歴史書は世界一薄い」と揶揄したが、これはドイツ人の性格をいい、ベルギーが独立してから時間が経っていないことを揶揄している。一方、オランダ人は世界一ケチだというが、そうわれてみれば「ダッチ・アカウント」というイギリス人が揶揄した言葉もある。

 作者はオランダの過去と現在に触れ、この国を代表するゴッホ、レンブラントなどについても語り、隣のベルギーについても触れている。この作者独特の一方的な評価もあるけれども、納得させられてしまうところが凄いし、この人の作品に飽きない理由でもあろうか。

 ただ、オランダという国をトータルで知ろうとする読者にはもの足りないものが残る。司馬遼太郎独特の作法というか、触れ方というか、訪れた国の本質にまでは触れようとしないのは、知らないことを書くことの危険を知っていたからであろう。

 だから、本書も、例外に漏れず、聞いたもの、見たものに、対象を絞っている。


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