覚えていない/佐野洋子著

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「覚えていない」 佐野洋子(1938年生)著
帯広告:生きることが百倍味わい深くなる痛快エッセイ集
2006年8月 マガジンハウス社より単行本
2009年8月1日 新潮社より文庫化 ¥400+税

 著者は絵本作家であり、エッセイストであり、童話作家であり、小説家でもあって、そのせいで間口が広いのか、話題が縦横無尽の拡がりをみせる。

 戦前生まれという実年齢は登場するタレントや俳優が古いために感じられはするが、文体や文章に戦前の匂いはほとんどしない。しかも、若年層への迎合的な姿勢、言葉遣いもなく、その点感動的ですらある。

 そして、なによりも、エッセイの内容に抜群の歯切れのよさがあり、読了後の感想としては一陣の風が通過したような爽快感がある。

 目のつけどころ、言葉の選択、根本にある思想に人生や社会の実態に迫るものがあるためか、一見奔放な断定と多少の強引さをはらみながら、快刀乱麻の筆致が読者を納得させてしまう。

 この作家に触れるのは初体験だったが、世の中にはまだまだ未知のすごい女性がいるものだと、あらためて悟らされた。とはいえ、この作家と近づきになりたいとは豪末も思わなかった。


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