昆虫標本商・万国数奇譚/川村俊一著

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昆虫標本商万国数奇譚

「昆虫標本商・万国数奇譚」 川村俊一(1960年生)著
2012年1月20日 河出書房新社より単行本初版 ¥1600+税

 表題は昆虫となっているが、著者の専門は蝶で、蝶の売買を仕事にしている。私の友人にも蝶が好きで、1970年前後にかけ、沖縄の西表島まで行っていたことを思い出した。私個人に昆虫収集の経験は小学生のときの夏休みの課題で蝉の標本をつくって提示したことがあるくらいで、昆虫全般にわたって学名などとは縁がないし、興味もない。

 ただ、わかっていることは、何であれコレクションというものにのめり込んでいるのは、ほとんどの場合男であって、女ではないこと。

 自分が蝶に関心を持たなかったため読み始めるまで若干の躊躇があったものの、読み出したら、専門的な知識が全くないにもかかわらず、知らぬ間に最後まで読まされてしまった。それほど、内容は面白いし、文もしっかりしている。

 本書で知ったが、「昆虫などの固体に属名と種小名のニつのラテン語で表す学名「二名法」があるが、これは18世紀の初頭にスウェーデンの博物学者、カール・フォン・リンネによって体系づけられた」という。

 蝶々屋さんが足を向ける土地はいわゆる観光地ではないため、ときには怖い目に遭ったり、疑われたりもし、インドのダージリンでは半年も勾留された経験もあるらしい。

 作者が訪れた土地は日本国内はもとより、東南アジア諸国、南太平洋諸島、パプアニューギニア、ハワイ、メキシコ、中米、北米、南米と幅広い。一度など、南端のフェゴ島っからアラスカの北端まで5万2千キロを238日をかけ、同じ採取に地道をあげている同業者と一緒に昆虫採集旅行をした。

 標本そのものの売買、蝶一頭(匹は使わない)ずつの売買など、珍蝶を追って世界をかけめぐる作者の気迫と、そのために雲散霧消、崩壊してしまった家庭とのギャップにも人生の哀歓を感じさせて充分。


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