泳ぐのに安全でも適切でもありません/江國香織著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

泳ぐのに安全でも適切でもありません

「泳ぐのに安全でも適切でもありません」
江國香織(1964年生)著
2005年2月25日 集英社より文庫化初版
¥457+税

 本書は10の短編から成っているが、タイトル名はアメリカで目にした看板、「It’s not safe or suitable to swim」から採ったものだそうだが、私の英語感覚からは「It’s neither safe nor suitable to swim」が当たり前の英語に思えて仕方がない。とはいえ、この看板を見て瞬間的に、「使える」と思った感性は鋭い。

 このタイトルは「世間」や「世界」を表し、人が生きるには安全も適切さも保証されていないとの意図が含まれている。

 どの短編にもエスプリと趣向が窺え、それなりに成功してはいるが、設定も背景もそれぞれに工夫が感じられるものの、それぞれに顕著な異質性は感じられず、作者が意図したような色んな人生、色んな生活が描かれているようにも思えなかった。タッチが軽く、重厚感に欠けている点に原因があるようにも思われる。

 作者が肩、肘張らずに、気軽に書いたためではないかと推量したが、あるいは、私がこのように感じたのは、単に年齢差のしからしむるところだったかも知れない。


前後の記事

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ