十七世紀のオランダ人が見た日本/クレインス・フレデリック著

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十七世紀のオランダ人が見た日本

「十七世紀のオランダ人が見た日本」
クレインス・フレデリック(Frederik CRYNS/1970年生/ベルギー人)著
2010年7月20日 臨川書店より単行本初版 ¥2600+税

 前書きに「本書の目的は17世紀のオランダにおける日本観の形成過程を解明すること」とあるが、年代を追いつつ誰がどのような見聞をし、体験をし、どのように記述したかを明らかにしている。

 鎖国下の日本と唯一交易をしたオランダが得た日本に関する情報をいま改まって知ることには格別の面白さがある。この本を著した人がオランダ人ではなくベルギー人であることには、あえてこだわらない。

 「1609年、ニコラス・ボイクら二人が駿府へ赴き、朱印状を得た」という史実は初の知見。ボイクの残した手記には「堺、大坂、伏見、京都が互いに隣接し、堺は小都市だがロッテルダムと同じほどの大きさ。京都はアントワープよりも大きく、これらの都市はすべて人口周密で取引も大規模」とあり、貿易することとの利に触れている。とはいえ、「日本との貿易は1612年になってオランダ船が平戸に入港するようになってから始まる」。

 「インドネシアのバタビア(現・ジャカルタ)に本部を置く東インド会社は定期的に日本人傭兵を雇い、マラッカ諸島などでの戦いに使用した。その後、幕府の禁止令により人の供給が止まったものの、バタビアには日本市民団体が存在し続け、130人の兵士を提供する能力を有し、17世紀後半に至っても、オランダ人の名前を授かった日本人が残っていた」とは、これも初の知見。インドネシアには日本人の子孫が日本人の血を受け継いでいることを知らずに今も生きているだろう。

 レオナルド・カンプスは将軍に会った感想を記している。「将軍は誇りをもち、他国への侵略を考えたり、危害を加えたりはしない。彼の権力はその帝国の大きさ及び勇敢な兵士の数の多さにある。難攻不落の城を幾つも所有し、どのような武器にも不足していない。糧食にも富にも不足していない。金銀をはじめ、銅、鉄、鉛、錫などもある。絹も豊富、綿も麻もある」。

 (これは褒めすぎ。当時の日本の城を見た西欧人のほとんどは城の骨格が木材でできていることが大砲による打撃と火災に弱いことを見抜いていたはず)。

 1639年に幕府による鎖国令が出、それまで東アジアで朱印船が貿易を行なっていた日本人に替わってオランダが商品を供給することになった。一方、日本におけるポルトガル人の地位は年々悪化した。(一時はイギリスも日本との交易を望みはしたが、イギリスが売りたい毛皮製品が日本人には魅力に思われず、日本でこれらを捌くことは中国におけるのと同様に難しいことを認識。以後、イギリスは日本を関心対象から外し、対中国をメインターゲットとしつつインドで大麻の栽培を強い、これを半強制的には販路に乗せ、中国の大都市をほとんど巣窟の街を化した。イギリスとの縁がこのとき切れたことはある意味で幸運だったのかも知れない)。

 「17世紀前半はオランダにとって日本との貿易が重要な位置を占めていたため、代々の商館長からバタビア経由で本国に送られてくる日誌は大切に扱われた」。

 1626年、クーンラート・クラーメルは京都で行なわれた後水尾天皇の二条城への行幸に参列する許可状をときの将軍から得、その折りの一部始終を書き残した。幕末までに欧州人による天皇の行幸を実見した唯一の記録。

 「二代将軍秀忠、三大将軍家光のほか、儀式には尾張藩主、紀伊藩主、加賀藩主、水戸藩主、薩摩藩主、松平家など数名の大名も名を連ねていた」

 「カロンは日本人女性と結婚し、長期にわたって平戸に滞在、妻の親戚との親交や数多くの江戸参府と幕府との交渉を通じ、日本の社会や文化に精通。日本社会の構成基礎である士農工商に対し批判的な意見を開陳する一方で、日本女性の貞節を守る姿勢、純潔と勇気をもち、辱めに対しては死をもって報いる姿に圧倒された様子も窺わせている」

 また、「日本人が信仰について論争するのを聞いたことがない」、「僧侶のなかには地位の高い人に男色に傾倒している僧侶が少なくない」、「寺では人々が偶像の前で乱食、乱舞の大酒宴の場になったり、売春の場になったりもする」と驚きもし、

 「日本の親は子供を叩かないし、夜中に泣き叫んでも辛抱する。しかし、7歳を過ぎると、子供は賢明で謙虚であることは奇跡的。このような例を母国オランダでは見たことがない」と伝えている。

 ちなみに、カロンは6人の子供に恵まれた。

 「地位の高い日本側の対応者は傲慢」とあるが、庶民に対する官僚の、地位に驕る醜い姿勢を想像させる。

 上記は面白いと思った内容のほんの一部を紹介しただけ。日蘭関係の歴史に関心のある方には一読をお勧めする。


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