人国記・新人国記/浅野健二校注

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人国記・新人国記

「人国記・新人国記」 浅野健二校注 岩波文庫
1987年初印刷

 こういう本が世の中にあることは知っていたが、読んだのは初めて。

 この本の愛読者が、かの武田信玄だったという。現代の一つの県が二つか三つの国に分割されていた時代に日本中を歩いて書いたらしいが、その労は多とするに値するだろう。ただ、どの国の人間も、ぼろくそに書かれているのにはびっくり。「人の性格は自然環境によって形成される」というのが作者の基本的な考えだったらしいが、日本の自然環境はどこを歩こうと、外国を歩いたときほどの相違や差はなかったはずだ。その差はむしろ経済環境や文化のあり方によるものであり、当時の日本国内しか知らない人物にとっては想像の埒外であったろう。

 外国人から見たら、日本全国どこに行っても、急流があり、森があり、山岳地帯が多く、人間の居場所が少ないことに気づく。ただ、どこででも目にしたのは、季節によりもしただろうが、美しく咲き乱れる花々と、どの地域にも庭園が多く、どの家にも鍵がなかったことであろう。

 作者の考えを演繹すれば、「日本は海にかこまれた島国だから、島国根性が強く、狭量」ということになる。だからこそ、この地に生まれた人情の機微や情緒を愛する心根については外国生まれの人間には理解を超え、わずかな例外はあるが、かれらの関心の対象とはなりにくかったのだと推量する。

 いま、こんな本を書いたら、総スカンをくうだろうが、歯に衣着せぬ表現はある意味で痛快。


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