貴腐/藤本ひとみ著

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貴腐

「貴腐」(きふ) 藤本ひとみ著
副題:みだらな迷宮
1999年10月オール読み物に初出
2003年10月  文春文庫より初文庫化

著者は西洋史の専門家で、とくにフランス語には造詣が深く、現在フランス政府観光局名誉委員をしている。

本書の内容はフランス革命前後の混乱の時期を背景に、為政者ルイ14世と、その妻アントワネットが国民を無視した中央集権的国家を樹立した後、貴族らが乱脈に乱脈を重ねた物語を描いたものだが、フランスの当時の史実をまともに扱ったものか、どこまでが創造のお話なのかについては不明。

本書には「貴腐」と「夜食」という二編が収められているが、いずれも似たようなもので、正直に感想を吐露するなら、いずれも、手の込んだポルノ小説の域を出ていない。

著者には「ナポレオン」や「ジャンヌ・ダルク」を描いたものもあるようだが、隠微な情景は自らが体験するのならまだしも、書籍やビデオなどで、第三者として観賞するものではないという信念が、かつて初めてアメリカを訪れ、ポルノ館に連れて行かれたときから持っており、こうした劣情だけを小説のネタに据えて懸命に描く作家の姿を想像するだけで、吐き気をもよおす。著者の人間としてのレベルがフランス政府観光局名誉員の名にふさわしいとは到底思えない。

ただ、当時の乱脈を極めたフランスの貴族社会では、夫婦が仲良くする、愛し合う、褥を同じくするなどは軽蔑の対象であり、そういう卑属的なことを許されるのは庶民だけ、貴族の夫婦は結婚はしても、それぞれが恋をし、体を重ねるのは外部の人間に限るという風習があったと作者は本書のなかで語ってはいるが。とすれば、そういった風習、乱脈は現在のアフリカ社会と変わるところはない。


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