孤宿の人(下巻)/宮部みゆき著

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孤宿の人 下

「孤宿の人」 下巻 宮部みゆき著
帯広告:頑なに閉ざされた加賀様の心を無垢な少女、ほうだけが開いていく。
2009年12月1日 新潮社より文庫本初版 ¥781+税

 上巻は6月19日に書評。

 本書のミステリーの重要な部分を担う男の正体が下巻を読むことで判った。

 2005年8月3日に本ブログに平岩弓枝の「妖怪」を書評しているが、主人公は「鳥居甲斐守忠輝(とりいかいのかみただあき)」、将軍家斉の時代、世に名高い「天保の改革」で水野忠邦の右腕としてそれなりに辣腕を揮った政治家だったが、改革が失敗に終わった責任をとらされ、家禄は没収、四国の丸亀藩にお預けの身となり、24年後に解放された史実をベースに著された作品だった。

 本書では、この男が孤宿の人であり、預けられた先は同じ四国ではあるが、架空の「丸海藩」、江戸で妻子三人、部下三人を乱心の末に惨殺した元勘定奉行の加賀殿ということになっている。

 本書の解説は、過日逝去された児玉清氏が担当。「この本を読み終えた人はきっと深い感動に捉われているに違いない。そして、素敵な友と出逢えた喜びに似た不思議な心の高揚を身内に感じていることと思う」と書いているが、歴史的な事実を展開のなかに利用しながら、実は歴史とはなんら関係のない小説に結実させていることに違和感があり、正直いって、児玉清が帯広告の裏表紙に記した「読み終えたとき、僕はこの本への愛おしさに心を震わせていた」などという気持ちにはなれなかった。

 「ほう」という少女と加賀殿とのやりとりが潤いを感じさせてくれるし、この二人と、「ほう」を案ずる女性を加え、本書を構成する重要なファクターであることは理解できるが、少女を主人公に据えたアイディアが本書で十全に生かされたようには思えなかった。

 この小説をまとめる上で、上下あわせたボリュームが必要だったとも思えない。


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