愛人/マルグリット・デュラス著

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愛人/ラマン

「愛人」 マルグリット・デュラス(フランス人/1914-1996年)著
原題:L’mant(ラマン)  訳者:清水徹(1931年生)
河出書房 1985年単行本  1992年2月文庫化初版

 フランスがマレー半島のヴェトナムを中心とする土地を植民地にしていた頃が舞台。

 作者は父母、兄二人とともに、メコン川付近の僻地に存在するフランス人居留地に滞在、周囲は一面稲田、熱病と狂気と恐怖に包まれた孤立感の深い環境が背景。

 これが武力で東南アジアの一角を植民地化したフランス人の生活かと思わせるほど悲惨な生活、父親は早世、下の兄は若くして自殺、上の兄は自分勝手で奔放、母親は狂気まじりに喚くタイプで、家庭は貧窮に喘ぎ、複雑にして奇怪。

 作者は17歳時にメコン川を走る渡し船で知り合った華僑の財産家の息子と親しくなり、果ては身体を提供し、性の悦楽を知り、経済的に支援を受けるという立場、17歳でセックスの相手をすることも、宗主国のフランス女性が現地人と褥(しとめ)を共にすること自体、当時から犯罪であり、蔑視の対象を免れず、二人は互いに人に知られぬように注意しつつ関係を継続するが、数年後、彼女はフランスに帰国、この恋は実りなく終わる。どうやら、彼女は男を愛したのではなく、男との接触による悦楽を愛したといった印象。

 本書はフランスで1984年に発刊されたときは、150万部のベストセラー作品となったらしいが、本書が売れた最大の理由は17歳のフランス人小娘が植民地の現地人の男を相手に性の歓喜に溺れ、その行為に耽るという内容だったからではないかと思われる。

 とはいえ、本書の出だしは、散文というよりは詩に近く、文体にストーリーとしての繋がりが希薄で、書かれていることの意味を理解することには誰もが難渋するだろう。

 また、時系列が逆転したり、第一人称だったのが第三人称に変化したり、それが天才の文学なのかどうかは知らないが、退廃的で常識を超えた書き方が続き、瞠目する部分もありはするが、狂的でもあり、疲労を強いられる。上記書物の写真は作者自身である。

 訳者が「あとがき」と「文庫版解説」を24ページにもわたって書いていること自体、本書を素直に理解することの難しさを表している。


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One Response to “愛人/マルグリット・デュラス著”

  1. withyuko より:

     むかーし、見たような記憶があります。
    映画「ラマン」、でも、けだるいような、はげしいベッドシーンばっかりの映画で面白くなかったような気がします。

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