最後の喫煙者/筒井康隆著

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「最後の喫煙者」  筒井康隆著
副題:自選ドタバタ傑作集
新潮文庫化 2002年11月

 解説者が誰かは知らないが、「筒井氏の作品はいつでも過激、緻密に計算されているのに暴走している。ドタバタでナンセンスなのに、気味が悪いほど、現実的。むしろ、ドタバタでナンセンスであるからこそ、リアリティがある。混乱と滑稽と悲惨に満ちたこの地球、それをまず右側に置き、左側には残酷なまでに自由なナンセンスの飛翔を置く。そして、真ん中で居心地悪く座を占めつつ、精神をできる限り、開いた状態に保つ、それが、筒井作品に立ち向かう本来の姿勢」と書いている。

 これ以上にない精一杯の解説ではあるが、「度を越した賛辞だ」とうのが、私の正直な感想。

 荒唐無稽でも、ドタバタでも、それこそがこの作者の作品に共通するテーマ、根拠の希薄な話に徹底する作家が存在するのも、途方もない物語を紡ぐのも、同時代を生きる作家が日本文学界の生み出す作品群の幅を広めることに繋がり、この世界に寄与しているとも思っている。

 とはいえ、物語の展開の過程に、矛盾や破綻が見え隠れすると、内容が内容だけに、その不調和には不快が倍になって跳ね返ってき、「阿呆か」と罵倒されかねないリスクも避けがたい。

 本書が教えてくれるのは、この種の荒唐無稽を最後まで魅力を失わず、破綻や矛盾にも陥らず、書き上げることの半端でない難しさであり、下手をすると、貴重な時間を無駄に使わされた不快だけが読み手に残りかねない。

 はっきりいって、本書から学ぶことは一切なかったし、このような作品群が過去、数々の賞に恵まれた事実が不可解であり、賞を与えた側の選定基準と、与えた側の頭の具合に限りない不信を抱いた。「衛生サック」のみならず、本書には、ほとんど死語に近い言葉が1934年生まれのお爺ちゃんの書にしばしば出現するが、文庫化する際、編集者が手を入れなかったのは怠慢というしかない。


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