身体をめぐるレッスン2-資源としての身体/鷲田精一・荻野美穂・石川准・市野川容孝著

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「身体をめぐるレッスン2」 資源としての身体
鷲田精一・荻野美穂・石川准・市野川容孝(共著)
帯広告:値踏みされ価値を切り売りされる身体
2006年12月22日 岩波書店より単行本初版
¥2700+税

 本書の「レッスン1」は、本ブログに2007年9月14日から9月16日まで、10回に分けて書評、紹介した。

 「レッスン2」のエキスをまとめてみると、以下のようになる。

1.「ピルは途上国におけるバースコントロールを目的として開発されたが、市場に出ると、それに飛びついたのは、中絶、堕胎を合法として認めない先進国の女性たちだった。日本は、先進国、ことにキリスト教の影響を強く受ける国からは、自由に堕胎のできる医療現場を非難された」

2.「欧米では避妊法開発の歴史は長く、主に対女性に向けてのものだった」

3.「ニート、フリーターの増加は若年層の体力低下傾向と関係している」

4.「子供を社会化する環境の喪失。子供が多くの他人と接触する機会の減少は聞く力、話す力の減退を促す。携帯電話やメールがその傾向に拍車をかける」

(女性が夫の両親との生活を忌避したため核家族化が進み、女性が社会進出をし経済力を手にするようになって、さらに少子化が進行し、ために家族間に世代の異なる人間が不在となり、同時に家庭に社会性が育つ素地が失われ、子供がコミュニケーション不足に陥り、祖父母や両親や兄弟姉妹から無意識に学ぶ多くの智恵を獲得する機会も失われた。)

5.「日本のハンセン病施設はプロミンという開放治療が可能となった1950年以降も強制隔離を継続した点で、国家による不当な私的自由の制限である。しかし、自由主義もまた安全性の論理を抜けださない限り、別種の隔離、例えば、精神病院という施設をつくり、正当化している」

(かといって、精神病施設がなかった場合、精神病患者をもつ家族はもとより、社会はこれをどう扱ったらいいのか。野放しにするわけにはいなないのだから。だいたい、殺人を犯した人間がしばしば精神鑑定の対象になることが私には理解できない。精神に殺人を犯しかねない傾向をもつ人間を野放しにすることと「自由を奪う」こととは別次元の問題ではないか。当人を守るのか、一般の人を守るのか?)

6.「ハンセン病は遺伝ではなく、感染症であるが、その伝染性は弱く、プロミンという薬品が出来てからは、家族が同居を恐れる理由もなくなっている」

7.「アメリカの雑誌、ワイアードが人体価格リストを紙上に載せた。それによると、心臓や腎臓よりも体液、組織の方がはるかに高額で、女性の生殖器も高い。理由は近年の再生医学の発展により、神経から精子まで、あらゆるものが幹細胞からつくり出されているからだ。むろん、人体も、臓器も、この際、「もの」としての扱いに変化する。これはバイオテクノロジーの発達と無縁ではない」

8.「卵子や精子の売買には、親族の情報、健康度、年齢、性別、学業成績、社会的地位などが事前にチェックされ、価格が決まる」

9.「研究者や製薬会社は投資家のこうした権利主張に含まれる意味づけや信念、概念が人体資源をめぐる権利を配分するのに適切な思考法なのか疑問を呈する。人体資源は石油や石炭のような地下資源のように扱うという意味で資源化と呼び得るのではないか」

(アメリカでは今や人体の臓器、組織まですべて投機の対象とするのか。投機の行きすぎが今回の金融恐慌を招いたというのに)

10.「日本国内では臓器、組織、細胞を研究開発のために提供してもらうことには難しい制限があるが、ために長年、その提供を海外に頼ってきたため、スムーズな医療技術を施す上での隘路になっていて、関係者は政府に要望書を出している」

(最近、議会を通った「臓器移植」に関する法律と関連しているだろう)。

11.「体外受精が招いた材料化、資源化は、正常な子宮、卵巣、出産年齢を過ぎた女性の子宮までも摘出してしまい、これを商業ベースに乗せる医師をも出現させた」

12.「生存無価値な生命の抹殺はナチスドイツに固有の考えではなく、ダーウィンの種の起源が提示した進化論のなかの自然淘汰、適者生存という考えに人命を預けるべきだという考えを欧米にもたらした。当時、米国ですら、進歩的な立場の人間がキリスト教的な道徳主義を批判し、科学的な社会改革を求め、生存不適者の安楽死という処方を支持した」

(戦後、ダーウィンの進化論がアメリカの全高等学校の教科書から意図的に外された経緯があり、皮肉な現象というしかない)。

13.「治療の順位決定をトリアージ(フランス語が原語)というが、大量の人間が一度に生死の危機に見舞われた場合、どの患者から治療を行なうかの順位づけをなさねばならない局面があり得る。そこで、待機させられるのは、まずアルコール中毒者、自殺未遂者、麻薬中毒者、売春婦、ドメスティックバイオレンスの加害者、ストリートピープル(ホームレス)である」

(一方で、現在流行中のインフルエンザのワクチン投与の対象者を順位付けすることの是非を巡り、あるいは順位の決定を巡り、あるいは海外からの副作用の可能性のあるワクチンの輸入をめぐって議論が高まっている。副作用のリスクを承知でワクチンを所望する日本人は僅かな数にとどまると私は思っている)

14.「閉経、更年期が女性の老いの一つのメルマールという通念がある。寂聴は男は老年になっても人を恋う情念はあるのに、肉体はそれを裏切って老いていく。女性は機能的には不能ではないのに、男から欲望されなくなると言っている」

15.「歳をとって枯れるのではなく、歳をとれば異性との触れあいはセックスの有無は別に、もっと必要になる。ペット愛好家はペットに触れること、触りたいという欲求がベースにある」

 上記したエキスはそれぞれ、てんでんバラバラだが、克明に記そうとするとキリがないので、脈絡が多少欠落しても、それを自覚したうえで、記した。また、本書では、上記したこととは別に、尊厳死、安楽死という、現今深刻な問題となっている部分についてもかなりの部分をその課題に向けていて、考えさせられることが多い。

 自分が社会生活に快適に適応できない病気になると、尊厳死、安楽死を真剣に考えるものだ。日本の病院では頭から「おめんこうります」と逃げと一手だが、年金は減るし、食料、飲料の消費も減るわけだから、この際、認可事業に組み入れてもいいのではと思うのだが。


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