見上げれば星は天に満ちて 心に残る物語 日本文学秀作選/浅田次郎編

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「浅田次郎編による『心に残る日本文学秀作選』」 
副題:見上げれば星は天に満ちて 文春文庫

 前回、宮部さんの選ぶ他者の作品に接したときに比べ、素直に「あぁ読んでよかったな」と思える作品は少なかった。これは浅田氏と私との好みの問題かも知れないし、私が浅田氏のレベルに到達していないことの証左かも知れない。

 松本清張の「西郷札」は文句なく、私のお気に入りの作品(宮部の選にも入っていた)でもあるが、他の作品ははじめて接する作品群で、さすがに多読の方の選出は違うなと感心した。一貫するのは、人間の心情、あるときは奇怪に、あるときは突飛に、あるときはしたたかに、あるときは不思議な幻想で、あるときは洒落に随して、あるときはテンポ早く刻んで集結に至る、またあるときはユーモアに満ちながら、人の情をストレートに表現する。

 作者が選ぶ「他の作家による作品」ということになれば、選ぶことによって、選者の懐の深さや、隠されたpreference(嗜好)がわかるから、それはそれで別のアングルから選者のキャラクターに迫るためのヒントとはなる。

 私の友人に気違いじみた浅田次郎フアンがいて、彼の作品のすべてを読破していると思うが、私は友人の好みとは合わないし、浅田次郎の作品を悉く読んでみたいと思ったこともない。とはいいつつ、最低でも6冊は読んでいるが。

 ただ、この本から薄々感じたことは、浅田氏はかれなりに他の作家の感性を超えるものをもっているということ。

 もう一つ、この作家は泣かせるのも上手、アッパッパーと遊ぶのも上手、守備範囲が広いことは認識している。人間には相性というものがあって、どうやら私とは合わない。


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