三面記事の男と女/松本清張著

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三面記事の男と女

「三面記事の男と女」 松本清張(1909-1970)著
1963年から1970年までに書かれた5つの短編集が収められている
角川文庫  2007年2月文庫化初版

 解説者は「清張の時代は終わっていない。来るべき時代の貌を読者に予言している」と書いているが、私の印象では、この作品に収められた短編は書かれた年度以上に古い感じが拭えず、代表作である「点と線」を書いた時点と内容的に大差ない。

 この短編集から日本の戦後しばらくの社会のありようが目に浮かび、その当時、「社会派ミステリー」との評価が固定、日本がまだ貧しかった時代にこそ、共感を得られた作品が多かった。

 全作品がそうだというわけではないが、本短編の文章づくりは一貫して硬質で、荒く、週刊誌や新聞の三面記事に登場する男女の情事の顛末となった事件を力まかせに、はしょって描いた印象があり、面白いことを否定はしないまでも、情緒面での欠落を感ずる。

 清張の作品で気になるのは、「女は30代半ばになると目の淵に小皺ができ、頬がたるみ、皮膚に弾力を失い、顔色に艶が消える」というワンパターンの表現が多いことで、こうした女性への見方では、現代女性には受け入れてもらえないだろうし、当時でも女性の肌は当人のケア次第であろうし、現今では30代半ばの現代女性に、清張が表現したような女性は稀有といっていい。

 また、ある短編では、印刷所で若い男が数人いるところで、主人の妻や主人の弟の妻が平気で裸身をさらしつつ風呂場に行くという光景は、いくら昭和半ばとはいえ、あり得ない光景ではないか。

 正直なところ、私はこの短編集を高くは評価しない。


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