マイルス・デイヴィス 青の時代/中山康樹著

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「マイルス・デイヴィス青の時代」 中山康樹(1953年生)著
帯広告:天才の原点、ジャズ黄金期がここにある
2009年12月21日 集英社新書初版 ¥700+税

 本書はジャズ界にいわゆるモダンジャズを持ち込み、帝王の名をほしいままにしたマイルス・デイヴィスのニューヨーク進出から「カインド・オブ・ブルー」というアルバムが出た年までを「青の時代」と称し、その間のマイルスの軌跡をたどったもの。

 マイルスがセッションを共にしたジャズメンやマイルスのメンバーに入ったジャズメンなどのほか、レコーディングのプロデュースにかかわった人物との関係などを含めて書かれた内容のものだが、年代でいえば1944年から1959年までの15年間、年齢でいえば、デイビス18歳から33歳まで。

 私自身がジャズにのめったのはハービー・ハンコックの「ヘッド・ハンター」というアルバムにある「カメレオン」をFMで聞いたことがきっかけだが、以後、マイルスを、コルトレーンを、ロリンズを、ガレスピーを、チック・コリアを、キース・ジャレットを、デイブ・ブルーベックを、エリック・ドルフィーを、オスカー・ピータースンを、ウェイン・ショーターを、レスター・ヤングを、ギル・エヴァンスを、セロにアス・モンクを、マッコイ・タイナーを日野照正を、渡辺貞夫などなどを知り、ジャズの魅力にはまり、痺れた。

 当時、買ったレコードは初めにテープに録音してしまい、FMからのエア・チェックにも没頭し、200人を超えるジャズメンの音を380巻のテープに収めた。むろん、アンプ、チューナー、プレイヤー、スピーカーなど、できるだけ良質の、ジャズを聞くための機材を入手した。

 どのテープも僅かにも褪せることなく、今でもむかしのままの音で聴くことができる。

 本書には年譜が入っていて、その年々の世界の出来事はもちろん、ジャズ界の動きも並行して網羅されているので、当時は知らなかったことを知り得た。たとえば、ジャズ界のピアニストとしては超有名というだけでなく異色の弾き方をするチック・コリアとキース・ジャレットがマイルスが編成した「2キーボード」となってセッションを行なったことがあるらしく、これには驚いた。

 モダンジャズのハシリはデューク・エリントンの「Take The A Train」ではないかと思っているが、この曲がニューオリンズを中心とするエリアで盛んだったスウィング・ジャズからの脱皮を促し、ディジー・ガレスピーのトランペットやソニー・ロリンズのテナーサックスがモダンジャズへの道を切り開き、マイルスのミュートを使ったトランペットやジョン・コルトレーンのヘビーなサックスが「ニュージャズ」、あるいは「クールジャズ」と呼ばれる音を創造したのだろうと思っている。

 本書を読んで面白いと思ったのは:

*マイルスがフォレス・シルヴァーというピアニストの「ドゥードリン」を聞いたとき、「めちゃくちゃファンキーじゃないか」と賞賛し、さらに、「If I was a bitch, I’d give you some pussy」と言った。マイルスはシルヴァーとしばらくセッションを一緒している。

*マイルス語録に、「Music speaks for itself」(音楽がそれ自体を表現している)というのがある。

*マイルスとコルトレーンは同じ歳で、1955年、二人が29歳のとき(マイルスはすでに知られた存在だった)、初めて一緒にレコーディングをしたが、そのときコロンビアのスタッフが、「マイルスはなぜ、あんなイモなサックスプレイヤーを使ったのか」と批判したという。(知名度の違いを語るエピソード)。なお、二人の残した録音には、「Round About Midnight」がある。

*マイルスのトランペットがオープンとミュートを巧みに使い分けるという奏法によって繊細な音を確立したとき、関係者は、「卵の殻の上を歩くような」(A Man Walking On Eggshells)と表現した。

*カナダのギル・エヴァンス(ピアニスト)とのコラボレーションで出来上がった「Miles Ahead」は異例のベストセラーとなった。

*1957年12月に単身ヨーロッパに赴き、映画「死刑台のエレベーター」のサウンドトラックを録音。この曲の入ったテープは私の車にいつも置いてある。マイルスの得意とする「間」の取り方がたまらなくいい。

 本書を読みながら、アメリカ、カナダをセールスで飛び歩いていたとき、ジャズプレイスによく足を運んだこと、ガレスピーなどの有名ジャズメンを目の前で見たことを思い出した。

 日本人なら、日野照正のトランペットがいいし、渡辺貞夫のサックスも悪くない。日野もマイルスの影響を強く受けたジャズマンだが、日野、渡辺、両者ともに私のコレクションに入っている。

 モダンジャズの勃興期がよく解るという意味では、ジャズ界にとっても得難い書であり、ジャズの好きな人にとっては当時を知るうえで格好の案内書。


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