わたし色のパリ/中村江里子著

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わたしいろのぱり

「わたし色のパリ」 中村江里子(1969年生/元アナウンサー/現在パリ在住)著
KKベストセラーズ刊 2009年3月24日 単行本初版 ¥1500+税
帯広告:この国に、人に、空気に、惹かれる想いが強くなる。メトロの音楽家たち、エッフェル塔のイルミネーション、凱旋門にかかる三色旗に胸躍らせて。

 「イギリスとEC」に関する書評をブログに書いたばかりだったため、誰が書いたかに注意を向けず、タイトルの「わたし色のパリ」が視野に飛び込んできて、入手、読了したという経緯。

 読み始めるなり、ラフで、やや拙劣な表現と言葉の選択にぶつかり、と同時に「ですもの」「~かしら?」「~ね」のオンパレードに終始する会話体の文章に、、そのような書籍に出遭ったことのない私はしばらく茫然自失、一時は読書すること自体をやめようかと思った。読み継ぐうち、作者はプロの作家ではなく、フランス人の男性と結婚したためにパリに居を移し、子を産み、育て、という過程を経てきた体験を自分の言葉でありのままに表現したのだということに気づき、かつ納得した。

 そして、彼女の人柄の良さが次第に文体の柔らかさともマッチしてきて、気にならなくなった。

 以下は、フランスという国を知るうえで、面白いと思ったところだけを、つまみ食い的にピックアップした。

 驚いたのは、「かつて少子化に真っ先に悩んだフランスが、現在の出生率は2.02人で、欧州で第一位」という事実、そのことはおそらく先進国のなかで第一位ということになるのではないか。作者の言によれば、社会環境のあり方、保母、乳母、ベビーシッターの存在、女学生がアルバイトで子供をケアする仕組みなどが整い、働く女性を助けているという。

 また、第一子出産後、フランスの女性の82%が仕事を続けるというのも、そうした社会環境が整っているからであろう。

 とはいえ、ヘルプしている人の大半はフィリピンや、元植民地から移民した女性(モーリシャス、アフリカなど)が多く、子供のみならず、鍵の束まで渡してしまえるほど信頼できる人を探すのは大変だという実態は理解できる。

 作者が「日本人はよくアルコールを一気呑みするが、フランスでそういう場面を見たことはない。だいいち、そういう呑み方はワインやシャンパンに対して失礼だとフランス人は感じているのではないか」と言うが、私が思うには、日本人に下戸が多いがゆえに、一気呑みさせるとひっくり返る人が出るから面白いのであり、誰もそういう状態に陥らぬ白人社会では一気呑みそのものに関心が高かまることはない。日本人には他国に比べ下戸が多いため「酒の上でのこと」という言い訳も通用する。

 フランスは、「基本的に農業国であり、EU27か国が所有する全農地のうち、フランスは15%を占めている」という。

 「フランス人は世界一のワイン、シャンパン、チーズ好きで、チーズの年間消費量は一人あたり20.4キロ、チーズの種類は400種が生産されている」。

 「フランス人男性が最も魅力的だと思う女性の年齢は、アンケートの結果、第一位が50歳代、第二位が40歳代、第三位が30歳代。若さは期間限定であり、愛の対象ではなく、年齢を重ねることで人間としての深みを増し、人生経験も豊かになり、自信をもって社会に対応できる、そういうところを評価する」といい、彼女の夫は「あなたはママとしての存在だけではなく、同時に私の妻。二人のときは女として振舞ってくれ」と頼むという。子供が生まれても、誕生と同時に、子は子の部屋で、夫婦は夫婦だけの寝室を使い、日本のように川の字になって寝るということは決してない」。

 (セックスの回数は、フランス人が世界でナンバーワンだという話も頷ける)

 日本人には人見知りする人が多く、作者もそういう一人だったと述懐している。フランス人にも、無口で穏やかな人もいるが、そういう人は周囲から誘ってもらえないそうだ。アメリカなら、沈黙している人は存在しない人と同様に扱われる。 

 「フランス語には日本語でいう我慢するに相当する言葉がない」らしい。また、日本語でいう「おじさん」「おばさん」という言葉もなく、年代の40代、50代に魅力を感ずる社会が生まなかった言葉といえるのではないか。元々「おじさん」は親戚の「伯父」ないし「叔父」が、おばさんは「伯母」ないし「叔母」が語源であり、それが壮年、熟年の男女を「おじさん」「おばさん」あるいは「おじん」「おばん」という、突き放したり、けなしたりする言葉に変容していったのではないかというが、当たっているだろう。

 (その点では、アラフォーが云々されたり、歳の差婚が話題になるのは「おじさん」「おばさん」からの脱却となるかも知れない)。

 「フランスでは、娘さんならマドモアゼル、大人の女性ならマダム、二つの呼び方しかない。とはいえ、フランスにも車を運転していて強引に割り込みをしたり、親指を立てて怒鳴る女性もいるし、意地の悪い女性もいる」とは正直な経験に基づく感想。

 日本人が海外で議論に負けるケースが増えているのは、母国語自体に語彙が多いのに、個人の脳内に語彙が不足しているからではないか。

 フランスは芸術の国だが、ナポレオンの時代が最強の時代であり、以後はドイツの台頭に脅かされ、二度までも国土を蹂躙された歴史がドイツへの恐怖心を国民に植えつけたが、EUが成立したおかげで、統一後はむしろフランスが主催国であるかのような立場に置かれ、EUの委員長がどこの国の誰であれ、盟主として君臨しているかに感ずる。

 本書からは、パリで生活することの一端を知ることができた。


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2 Responses to “わたし色のパリ/中村江里子著”

  1. withyuko より:

     女性の魅力は50代になっても。。。。っていうのがすごくいいですね~。日本ではオバサンというだけでもうひとくくりにされちゃうし、年齢的に中年になっても、いかにオバサン化しないでいられるか?ということに40歳を越えた私たちは心を悩ませたりします。実年齢はどうしようもないので、せめて気分だけは若くいよう!とか。フランスのようにステキに年を重ねよう。。。と思えるといいと思いますし、日本の男性もオバサンを嫌わないで欲しいです。

  2. hustler より:

    日本では、結婚して子供をもった女性は、第一に母、第二に妻、第三に女になるんですね。フランスに限らず、欧米のほとんどは第一に女を主張しますよね。日本の家庭における悪い癖は、欧米人から見た場合という意味ですが、夫が妻を「お母さん」、妻が夫を「お父さん」と呼ぶことが互いに頻繁にあることです。こうした実態も影響しているのではないでしょうか。

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