おはん/宇野千代著

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おはん

「おはん」 宇野千代著  新潮文庫

 六年前に読んだときは、間違いなく「名作」の一書だと思った。

 もう一度手にとったのは、これから大学生になる女性に他の名作とあわせて何冊かを贈ろうとしたことに動機がある。

 ある優柔不断な男、ネボケ野郎といってもいいが、優しみ、雅び、哀切さ、可憐さをもつ二人の女のあいだをうろちょろする、これ以上にないくらい「美味な思い」を味わう話は、はっきりいって羨望と同時に憎悪を感ずる。

 ただ、この話は作者(女性)が男を一人称にしつつ語り継ぐ形式をとっているが、そのあたりに男性作家には書けない心配りや心象が感じられ、幸いにも「稀有の作品」に結実したようには思われる。

 宇野千代はかねてより社会にとって「一婦一夫制」が無理な制度であり、破綻は必定との考えが脳裏にあったのではないか。そんな気がした。そのことは、むろん直接聞いたことはないけれども、瀬戸内寂聴にもいえるかも知れない。

 所詮、人間なんて、どう生きても、一生は一生であり、それぞれの生涯は比較を超えている。どのみち、人間は一回生まれれば、一回はいずれ必ず死ぬのだから。

 ただ、これから大学生活をスタートする女性に「名作だからぜひ読んでおいたらいいよ」といっていいのかどうかは、わからなくなった。


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