沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史/佐野眞一著

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沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史

「沖縄・誰にも書かれたくなかった戦後史」 佐野眞一著
2008年9月30日 集英社インターナショナルより単行本初版 ¥1900+税

 副題に「今、美(チュ)ら島の封印を解き放つ」とあるが、本書は沖縄の戦後を641ページにわたって細々(こまごま)と、かつ延々と書いたもの。

 私は1980年から6年間と、1990年から4年間とを沖縄で仕事がらみで住んだことがあるが、本書で語られる内容は全く無縁の話が連続、懐かしい名前といえば、国場、大城、稲峰、西銘などの知名人と、ヤクザの旭琉会などで、僅かなものだった。

 正直に感想を述べるなら、戦前の枝葉末節の類に入る瑣末なことに拘泥して、執拗に取材を続ける展開には飽き飽きし、膨大なページを割いてまで書き残す価値があるのか疑問。作者にとって、たとえば、本土復帰前に現金輸送車が襲われた事件が大きな比重を占めているようだが、その一件をしつこく追うことが、たとえ沖縄の戦後史を解き放つことに寄与していると仮定しても、私個人にとっては興味をそそられる対象とはなり得なかった。

 沖縄は、戦後、確かにアメリカ兵士によるレイプなど犯罪も僅かではなかったが、返還してくれた事実は、ロシアの北方領土が未だに返還されない事実と比べ、はるかに恵まれており、復帰後は日本政府が沖縄での地上戦で命を失った人数の多いことと基地の存在(日本全国に散在するアメリカ軍基地の70%以上が集中)に気を使って、学校、道路、交通機関などを含むインフラにかなりの規模で支援を惜しまなかったし、現在でも、むろん国民の税金を使った気遣いは継続している。

 さらには、アメリカ軍が使っていた基地も徐々に返してくれ、沖縄本島の天久(あめく)などは見違えるような街並みに変貌している。また、兵士による犯罪に対しても、相互の関係に変化が起こり、基地の司令官も柔軟に対応するようになり、基地外での犯罪は日本側の司法の手に任すことにもなり、返還前と現在とでは隔世の感がある。

 沖縄本島の北に位置する与論島以北(奄美大島を含む)は鹿児島県に所属していたことで、インフラ整備の面で雲泥の差になっていることも認識すべきだし、戦争と基地というお題目を頼りに、そればかり何十年も表立って主張する姿勢は偏に左傾著しいローカル紙、琉球新報と沖縄タイムスの誘導によるもので、論調は「バカの一つ覚え」さながらに変わっていない。

 9・11テロ以降、海外旅行が激減し、その分が沖縄に流れ、全体が観光スポットとしての地位を上昇させ、多くのホテルが新たに建設されもして、雇用の機会が大幅に増えたことも事実、「もって瞑すべし」と言いたい。いつまでも、「何かくれる人が主人」などという、いじけた精神とはサヨナラして、新しい世代による新しいリーダーシップを期待したい。

 不発弾について、「米軍が処理したもの5500トン、自衛隊が処理したもの1500トン、海に没したもの500トン、推定残存数は2500トン」とある。数年前、建設現場での爆発によって死者が出たという報道があったが、建設現場では事前に不発弾の有無をチェックすることが建設業者には義務づけられており、あの事故は手抜きがあったのではないかと、私は推測している。

労作に対して申し訳ないけれども、戦後沖縄の闇の部分、隠蔽された部分が暴露されたからといって、「それがどうした?」といった程度の反応しか私の脳裏には浮かんでこなかった。言葉を代えれば、期待したような内容ではなかったということに尽きる。おそらく、本書による「昔は書かれたくなかった話や事件」は、戦後に既に大人になっていた世代のノスタルジーを満足させるものに過ぎず、私のみならず、若い人の関心の的とはならないだろう。


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