一億個の地球/井田茂&小久保英一郎著

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1億個の地球

「一億個の地球」 井田滋・小久保英一郎共著
岩波新書 1999年12月 初版

 地球と同じような惑星が銀河系に存在するか否かをコンピューターを駆使、数々のシュミレーションを行い、最新の観測技術を使って調査した結果を本書にまとめたもの。

 以下、学んだこと、気になったこと、忘れていたことなど列記し、最後に本書を読んだ感想を述べる。長くなるので、宇宙科学に関心のない方はこのブログは無視してください。

1.地球型惑星(水星、金星、地球、火星)は二天文単位(太陽と地球との距離を1天文単位という)内に存在し、岩石を主成分とし、鉄が中心核(コア)をなす構造。

 一方、巨大ガス惑星(木星、土星)は10天文単位の領域に存在し、地球質量の10倍程度の質量の固体(氷、岩石)を中心核とし、まわりに膨大な水素、ヘリウムガスをまとった構造で、トータル質量は地球質量の80倍から300倍。

 さらに、巨大固体惑星(天王星、海王星)は太陽系外縁部に存在し、地球質量の10倍程度の質量の固体(氷、岩石)を中心核にもち、周囲は少量の水素とカリウムガスの層という構造。

2.惑星の固体成分の質量のトータルは太陽質量の1万分の1程度。ガス成分を含めても、太陽質量の1000分の1しかないが、惑星の軌道運動の角運動量は太陽の自転の角運動量の約200倍に達する。

3.太陽と円盤状の星雲は同時に形成され、円盤が分裂して固まって惑星が誕生したのだが、円盤内の固体成分が凝縮し、そこにガス成分が後から加わったというのが太陽系形成論の基本。

4.太陽のような恒星は誕生して1000万年程度経つと、内部で核融合を起こして燃えはじめ(水素がヘリウムとなって燃え、温度は100万度を超える)、主系列といわれる比較的定常な状態に達し、この安定が100億年継続する。

5.銀河系は主系列に達する前の若い星のまわりに50%以上の高い確率で円盤が存在し、それは標準的なモデルとして想定した円盤に酷似。円盤のサイズは100天文単位レベルで太陽系と同程度。円盤の平均質量は標準モデルで仮定した数値とほぼぴったりの太陽質量の100分の1だった。形成段階の星雲間コアの収縮には激しいジェット気流が見られ、形勢段階が終焉に近づくと、円盤モデルに近づいてくることも判明した。

6.原始惑星系円盤は超新星爆発の衝撃や、星雲コア自体の重力で収縮をはじめるが、それぞれが接近すると重力は強くなり、収縮は加速される。回転速度が上がると、遠心力が働き、一点には収縮できず、遠心力が重力に拮抗してくる。このように星が形成されるときに自然に円盤ができるのだが、なぜ太陽質量の100分の1の重さの円盤ができるのか、なぜ数千万年で円盤が消えるのかは、まだ理論的に判っていない。

7.原始太陽系の円盤からの惑星形成;

 1)太陽周辺のダストから微惑星が形成される(原始太陽が誕生して数千年から数十万年後)

 2)微惑星の集積による地球型惑星の形成はダストあるいはダスト粒(キロメートルを越えるもの)同士の衝突による。ダスト層の密度がある程度以上に高まると、ダスト同士の重力が強くなり、かき混ぜや引き伸ばしは効かず、密度の濃淡はどんどん強くなり、ぶつかっては分裂し、ダスト層が収縮して微惑星が誕生する。この時点で、微惑星の数は太陽系全体で100億個に達している。

 3)もう一つの説は、重力不安定を介さずに、ダスト同士が衝突合体をくりかえして、次第に成長する。ただ、この場合、太陽に落ち込む前に、そのサイズを超えているくらいに成長しているかが問題。たとえば、メートルサイズに成長したダスト粒子が衝突したときに、壊れずに付着できるのか、いまだに確たる理論は成立していない。太陽系の周辺部の彗星やカイバーベルト天体は微惑星の生き残りだと考えられている。

 4)円盤誕生後、数十万から数千年後、微惑星同士がぶつかって合体し、成長する。微惑星は太陽の周囲をほぼ同一平面で円を描きつつ回る。回りながらお互いの動きによって軌道を乱し合うが、これを「動散乱」という。動散乱によって円軌道からのずれは大きくなり、軌道が交差している微惑星はときどき衝突して合体し、成長を続ける。この過程を「惑星集積過程」と呼ぶ。

 5)微惑星形成段階で少しでも早く大きくなった惑星はより小さな微惑星を引きつけて更にサイズ的に大きくなり、加速度的に(暴走的に)成長し、はじめの質量の200倍になっている。より強い重力をもつ微惑星が他の小微惑星を重力で引きつけ、一層大きくなるという理屈。

8.次のステップは原始惑星の寡占的成長:

 サイズ的に大きくなった原始惑星はやがて成長の勢いを止め、別の原始惑星が現れる。互いに反発しあい、距離を保ちながら成長し、原始太陽系は少数の原始惑星と残りの微惑星から系をつくる。暴走的な成長をとげた微惑星も原始惑星と呼ぶ。円軌道からのずれ、軌道離心率、傾斜角度は一般に小さい。これは周囲の微惑星との重力散乱の際の「エネルギー等分配の法則」と呼ばれる効果。

 原始惑星の暴走的な成長はある段階で頭打ちとなる。周囲の微惑星を自身の重力で振り回してしまい、自らの成長が鈍くなる。すると、離れた場所で遅れて暴走成長を開始した原始惑星が追いついてくる。あちらこちらで原始惑星がやがて育ってくるが、これを「寡占的状態」と呼ぶ。複数の原始惑星が系を支配することになる。初期に4000体だった微惑星が50万年のあいだに約1、300体になり、3つずつの同じような原始惑星が形成される。

 原始惑星の軌道の間隔は「ヒル半径」の5倍から10倍となる。ヒル半径とは原始惑星の重力圏のサイズを示し、原始惑星の重力が太陽重力の影響に勝るようになる。地球では、ヒル半径は太陽と地球の距離の100分の1、木星では太陽との距離が10分の1くらい。このヒル半径の5倍から10倍という軌道間隔は軌道反発という効果で決まる。

9.「ケプラーの第三法則」により、太陽に近い原始惑星ほど公転が早い。従って、太陽に近い原始惑星は遠い原始惑星を追い抜くスピードで周回する。その際のお互いの重力で、太陽に近いものは減速されて、遠心力が弱まり、内側に動く。遠い惑星は加速されて遠心力が強まり、外側に動く。結果として、惑星同士の間隔は広がる。このとき、同時に軌道離心率も大きくなるが、その後、周囲の微惑星と重力相互作用しているうちに、「エネルギー等分配の法則」によって惑星の軌道離心率は下がってしまう。結果、原始惑星同士はほぼ円軌道を保ったまま軌道間隔を広げる。これが「軌道反発」と呼ばれる。

10.地球型惑星領域では原始惑星が残りの微惑星を集積しつつ、他の原始微惑星と衝突する。巨大衝突の時代で、数十の原始惑星から数個の地球型惑星が誕生する。たとえば、地球軌道では火星サイズの大きさの原始惑星同士の巨大衝突が何回も起こって、地球が形成されたと考えられている。

 とはいえ、少数で安定した、ほとんど同一平面上にあって、円軌道をもつ地球型惑星がどのような過程を踏んで形成されたかについては、まだホットな議論が続いている。さらに、暴走型惑星でもっと大きなものが形成され、互いに衝突をくりかえす時代がなかったのは、どのような可能性のもとになされたかについても不明である。

11.原始太陽系円盤の寿命は数千万年で、木星のコアができたときは、まだ円盤ガスは十分にあったので集められるだけ集めることができたが、土星の固体コアができたときは円盤ガスは消失しつつあったので、円盤ガスの密度が小さくなり、ガスの量は僅かだった。一方、天王星、海王星にいたっては、固体コアが形成されるとき

円盤ガスはまったく失われていたため、ガスをまとわず、水素、ヘリウムでみずからを覆ったと考えられる。

12.銀河系に惑星を探す人を「プラネットハンター」というが、彼らが発見した銀河系の惑星には太陽系惑星に似たものはなく、これまで発見されたうちの半数近くが0.05天文単位から0.1天文単位のところを回る、木星質量を上回る惑星でサイズ的に大きい。

 銀河系の惑星チェックには、もし惑星が存在すれば、中心星からの光は規則的に高周波数側か、低周波数側かにずれる。これを「ドップラー効果」あるいは「ドップラー偏移」と呼ぶ。惑星の軌道も中心星からの距離も「公転周期は中心星からの平均距離の1.5乗に比例して長くなる」というケプラーの第三法則を使うと判断可能。変動曲線の形から軌道離心率も判る。惑星の質量も中心星の揺れで判る。

13.地球に例をとれば、この惑星は太陽の周囲を秒速30キロメートルで回っている。地球型惑星は質量が小さすぎ、銀河の中の地球レベルのサイズの惑星をこの方法で捉えるためには、ドップラー速度の観測精度があと一桁以上、上がらないと、難しい。

14.太陽系惑星も現在の位置分布で誕生したという保証はなく、惑星はガス円盤を波立たせるだけでなく、微惑星円盤とも相互作用する。惑星重力で微惑星を跳ね飛ばすと、その反動で、惑星は内側にも外側にも移動し得る。太陽系は100億年間は安定だといわれるが、一方、それぞれの惑星の配置や質量が少し違ったら、あっというまに不安定になり得ることも判っている。

15.星の周りに形成される原始惑星系円盤の平均質量は太陽質量の100分の1程度。観測によれば、円盤質量は太陽質量の1000分の1から10分の1というバラつきがある。このガス円盤の初期質量の違いが惑星系の多様性を生む可能性とリンクしている。

 重いガス円盤では灼熱巨大惑星や大離心率惑星が捉えやすく、固体惑星はどの領域でも地球質量の10倍に達せず、すべて地球型惑星として残る。質量が小さければ、惑星間隔も小さくなり、たくさんの惑星が誕生する。重い円盤だと逆になる。太陽系はこれらの中間的な成立過程を経て、大小の惑星が残されたと考えられる。

16.銀河系の恒星の半数以上は二重星として生まれるが、それぞれ原始惑星系円盤をもっている例が続いていると観測されていた。従って、惑星の数そのものはこの銀河にかなり普遍的に存在するといっていい。

17.「月」がなにものであるか、なぜそこに浮いているのか、我々はそれに対する明確な答えをもっていない。一般論として、月は惑星の衛星としては異常に大きい。太陽系内においても、惑星に対する質量比が最も大きな衛星である。月探査ロケットを飛ばして調査すればするほど、謎は深まるばかりで、きわめて不可解な衛星といえる。(現在、日本は「かぐや」という衛星を飛ばし、月面のあらゆるところを映写しつつ、磁気波を使って月内部の調査を行っている)。

 水星、金星ともに衛星はゼロ、地球が1つ、火星が2つ、木星が16、土星が18、天王星が15、海王星が8、冥王星が1つ。土星の場合、衛星とリングは棲み分けをしている。粒子間の重力と中心惑星のおよぼす潮汐力が等しいところを「ロッシュ限界」という。一方、月は規則衛星でも不規則衛星でもない。その巨大さゆえに、地球と月の力学的特長の一つは衛星の惑星に対する質量比が異常に大きく、月は地球の80分の1だが、他の惑星では最大でも、1000分の1にすぎない。

 もう一つの力学的特質は地球の角運動量が大きいこと。地球の自転と月の地球まわりの公転は互いに深く結びついていて、そのため地球の自転と月の公転を足した角運動量は太陽系の進化において保存され、現在、月は半径約38万キロメートルの円を描いて地球を回っており、地球は24時間で自転している。

 かつて、月は地球のすぐそばを回っており、地球は約4時間で自転し、現在より6倍の速度だった。ちなみに、その頃の月までの距離は現在の16分の1で、見かけのサイズは現在の300倍だった。

 月の内部には地球に比べ、鉄分が少ない。地球のコアは全質量の約30%を鉄が占めるが、月探査機の観測によれば、月は全質量の4%以下だという。月には揮発性元素(カリウム、鉛など)が少ない。

 月の起源に関する説のなかでは、巨大惑星の衝突が有力で、地球と月を分離し、鉄分が地球により多く残ったというもの。

 現在の月は地球から半径約60倍のところにあり、毎年3センチずつ遠去かっている。月が常に同じ面を地球に向けているのは月の公転周期と自転周期が等しいからで、これは地球と月の潮汐相互作用の結果である。月の地球に向かう面はラグビーボールの細くなっいる面で、地球の重力に引っ張られているからであるが、同時に地球も僅かながら卵形に変形する。毎年、離れていく理由は、地球が重力によって月を振り回しているからで、月の軌道はラセンを描きながら大きくなっていき、その反作用として地球のでっぱり部分はブレーキをかけられ、自転は遅くなる。月の距離は遠去かるにつれ、地球自体の自転が遅くなって、自転周期と公転周期が一致してしまい、月を加速させることは不可能となり、それ以上離れていくことはない。地球半径の約85倍の位置で最終的には止まると予測されているが、それは100億年後の未来の話。

 (この現実が将来、地球の海の干満にどう影響するのかまでは説明がなかったが、太陽系があと100億年生存することはあり得ない)。

18.銀河系における地球的生命体存在の条件

 1)炭素、水素、酸素、窒素による大気組成。

 2)太陽光がエネルギー源であり、地球と熱と化学反応の媒質として水が必要。

 3)高等動物までの進化には環境の穏やかな安定が不可欠。

 天文学的条件としては

 1)中心星(恒星)の質量は太陽の0.3倍から1.5倍

 2)惑星の中心星からの位置が液体の水の存在を可能にする範囲。さらに、十分な量の水蒸気が大気中に存在しているためには、中心星から0.8から1.2天文単位の範囲。

 3)惑星の軌道が円軌道に近く、その軌道が数十億年の間に大きくは変化しない。安定が環境に、環境が生命の誕生と進化に影響する。地球では、過去、三度ほど10万年ほどの間隔で、周期にぶれが起こり、氷河期を経験している。とはいえ、他の惑星では地球よりはるかに多い頻度でこうしたことが起こっている。地球が三度しか経験していないのは、ひとえに月の存在で、ぶれが防がれている。

 4)惑星の質量が火星質量(地球の10分の1)以上で、地球質量の10倍以下。

 5)月のような大きな衛星をもち、自転軸が安定していること。

 以上の条件のなかで最も奇蹟的なのは月という衛星の存在であるが、これを楽観的に4分の1の確率と仮定すれば、銀河系100億の恒星のうち1億個以上の星に「地球」的な惑星が存在し得る計算となる。条件をきつくして、4分の1から100分の1にしても、なお100万個もの地球的惑星の存在の可能性を否定できない。

 「惑星は恒星形成の自然な副産物、生命も惑星形成の副産物。星くずから惑星へ、そして生命へ、そこに奇蹟は必用ない」とは、作者の最後の言葉だが、私には楽観的すぎるように思われる。コンピューターによるシュミレーションでは把握しきれぬデリケートなバランスがこの地球誕生にも、生物の誕生と進化にもあるような気がしてならない。さらに、月という衛星に似たものを持つ惑星があったところで、相互の距離についてはどうなのか、本書はこの疑問に答えていない。もう一ついえば、地球型惑星は小さすぎて現在の観測技術では捉えきれないというが、では、それよりさらに小さい月のような衛星はどういう手法を駆使して発見に結びつけるのか。

 コンピューターを駆使して、地球型惑星の存在を探し得るとの信念には学者らしい姿勢を感ずるし、それに意味があるとも思うが、銀河系のあるあらゆる星が太陽系と同時に誕生し、同じ条件のもとに進化したわけでもないということ、換言すれば、銀河系の中にある惑星誕生には互いに時系列的な違いがあるはずで、仮に太陽系と同じ惑星があるとして、地球とほぼ同じ質量の惑星に月のような衛星が存在するとして、なお残る疑問は、もしその惑星が地球の百万年前の状態だったら、人類はまだ猿人の段階であり、逆に百万年先に進んでいたら、環境破壊が行き着くところまで行って、人類は死滅しているのではないか。

 同種でありながら殺し合いをやめない、この性悪の人類という生き物が他の天体にも存在しては欲しくないという気持ちも消しがたく私にはある。人類とは、所詮、例外的な、とはいえあくまで異端児的な存在なのではないか、いや、そうに違いないというのが私の本音。

 かつて、「TIME」誌に「Is anybody out there?」という言葉が表紙に載ったというが、この言葉から受ける印象は「生命が他の星にも存在して欲しい」「人類は孤独でありたくない」との願望が底辺にあって、UFOを信じたい人の気分に通ずるものを感ずる。むろん、作者の「生命の誕生と進化に奇蹟は必用ない」との言葉が現実味を帯びるてくるのなら、それはそれで歓迎するというより、覚悟を決めるべきことではあるが。

 最後になるが、コンピューターによるシュミレーションには必ず、基本的な条件がインプットされる以上、そこには人為的な配慮が避けられず、想定すべき条件内容には、ときに膨大ともいえる大きな誤差の範囲があり得る。インプットする条件、あるいは条件の軽重をほんの少しだけ変えるだけで、アウトプットされる数値には大きな差異が結果されるはずだ。

 われわれは宇宙に稀な、極度に非凡な地球に誕生したからこそ存在しているのだと、私は信じている。


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One Response to “一億個の地球/井田茂&小久保英一郎著”

  1. コメントありがとうございました。
    これは面白そうですね
    さっそく明日探しにいってこようと思います。

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