一本道とネットワーク/堀淳一著

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いっぽんみちとねっとわーく

「一本道とネットワーク」 堀淳一(1926年生/北海道大学理論物理学教授)著
副題:地図の文化史・方法叙説
作品社出版  1997年9月20日  単行本  ¥3,800+税

 帯広告に「さまざまな地域、あらゆる時代を越えて、闊達自在、奔放自由に地図を読む」とあるが、このような内容の地図に関する書籍に出遭ったのは初めてで、ページを埋めるように掲載された諸々の地図に圧倒され、丁寧な解説にも驚嘆。

 「地図には、規矩地図と位相地図とがあり、前者はメルカトル図法のようにコンパスと定規で規則正しく配置されている地図であり、後者は縮尺と方位が正確ではなく、連続変形した地図をいう」との解説があり、「地図というものは規矩地図が正しいというのは固定観念にすぎず、道路網、鉄道網、航空網などを形成するものは『かたち』に歪みがあっても、そのことにこだわる必要はなく、地図を描く目的、対象によっては位相地図の方が明快で理解しやすいことがしばしばある」という。

 要するに、「双方に役割分担があり、相互に優劣はない」との意見。

 本書に掲載されている地図は欧州はむろんのこと、イスラム文化圏、エジプト、インド、ヴェトナム、中国、日本、南米にまでおよび、時代や地域によって異なる、それぞれの特徴を懇切に説明しており、労作という以外に言葉がない。

 ただ、掲載された地図そのものはすべて実際の地図より縮小され、そのうえ本来は色づけされている原画が白黒写真で紹介されているため、視認しにくいものが少なくない。

 昔に書かれた地図は子牛の皮が紙の代わりに使われ、高価でもあり、職人らは一定の場所に集まって仕上げたと想定されるが、ほとんどがこの世にたった一枚の地図であり、その時代の支配者のために描かれたものが多く、今日の、たとえば一本道路の鉄道網や、航空路を表す俯瞰地図(というより平面地図に近い)が一般人のためであるのとは対照的だという話には納得がいく。

 一般の人が読者になることは、ほとんど考えられない内容の書だが、それを敢えて出版した作品社の面目躍如たるものを感じた。


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