ピーク・オイル・パニック/ジェレミー・レゲット著

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「ピーク・オイル・パニック」 副題:迫る石油危機と代替エネルギーの可能性
ジェレミー・レゲット(イギリス人)著
原題:Peak Oil Panic
益岡/植田/楠田/タナカ共訳  作品社 2006年9月25日初版 単行本

 

 400ページ足らずの本を読みきるまで1週間がかかった。

 まず、「ピークポイント」というのは化石燃料の埋蔵リミットが限界を迎えることを言う。

 この本を難しくしているのは:

1.翻訳特有の言葉の羅列が日本語としてピンとこない部分がある。(誤植もある)

2.イギリス人特有のしつこさ、完璧を期すあまり、多くの専門家、業界人、学者の意見を採用しすぎ、それぞれが埋蔵量の面でも、「ピーク・ポイント」がいつやってくるかという点でも、さまざまな意見を口にするため、記憶すべくリポート用紙を備忘録に使わざるを得ず、これに疲れた。また、そのために、作者本人の意見がぼけてしまい、逃げている感も拭いがたくある。

3.ピーク・ポイントがいつやってくるのか、化石燃料が各国にとって戦略物資であるがゆえに、虚偽申請、粉飾申請、想像など入り混じり、混乱を深める。

4.「ピーク・ポイント」と「地球温暖化問題」と「代替エネルギーの可能性」についてにのみ、対象を絞るべきだったと思われるが、地球の生い立ちから筆を走らせたのは余計だった。

 資源のある国が(例・サウジアラビア)無税で、若者は働かずに食える。資源のない国(例・日本/スウェーデンなど)は選択の余地もなく、脱化石燃料を必死に模索する。(ただ、世界中に石油を探している中国が、電池に関しては1000件に昇る特許申請を出している事実には驚いた)。また、トヨタのハイブリッドが日本国内より欧州での売れ行きの方がいいというのも驚きだが、この事実は西欧人のほうが日本人よりはるかに環境破壊にコンシャスなことを暗示している。

 スウェーデンは現在でも国内エネルギーの26%を再生産可能なエネルギーで供給できているが、15年以内に世界で初の石油脱却型経済を実現すると公評している。(かつて酸性雨で悲惨な経験をしたドイツも脱化石燃料にも原発脱却にも他国より熱心である)。

(化石燃料の需要の増大が自然環境破壊を一層推し進めていることはだれにも理解できるが、個人ベースでできることには限りがあり、代替としてソーラーパネルの利用、風力発電、バイオ燃料の利用、ガスや石炭の液化プラント、水素貯蔵電池、潮力、波力を電力に換えるなど、無害エネルギーが使えるテクノロジーの完成まで、化石燃料の埋蔵量がもつのかどうかの議論に不分明な点が多い。新たなCO2とは無縁のエネルギーの開発にも技術的なアプローチができるよう資金面での政府による支援を含め、政府主導による思い切った投資が必要だろう)。

(ただ、こうした代替エネルギーの準備が間に合わなければ、世界にこれまでに経験したことのない厳しい経済恐慌が起こるだろう)。

(とはいえ、いずれにしても、21世紀の前般には必ず、そういう日はやってくるし、よしんば「ピーク・ポイント」が先に伸びたところで、化石燃料を使うかぎり温暖化は進む一方だから、「京都議定書」の協定、ルールの遵守は必須となるだろう)。

(アメリカは化石燃料の消費国としてはナンバーワンだし、ほとんどは自動車産業と軍需産業に使われている。ブッシュがそれらの産業から政治資金を受け取っている以上、これまで京都議定書にサインの意向を示さなかった。ところが、2007年1月28日の朝日新聞によれば、ダボス会議で唐突に米国が前向きに変化したとある。 ハリケーン、砂漠化、トルネードの多発、シカゴの猛暑、ニューヨークに冬雪が降らないなどなどの環境変化を、無視してはやっていけなくなっている現状があるからだろう)。

 サハラ砂漠の土埃が大西洋に飛ばなくなったら、植物プランクトンは栄養源を失い、海洋の多様性が崩壊する。アマゾンでは、降雨量が減り、熱帯雨林がゆるやかに死滅する。大気中には一層多くの二酸化炭素が排出される。チベット高原は雪と氷が解けることで、地球の熱放射を大きく減少させる恐れがあり、より多くの炭素が地表に溜まってしまう。 以前から、北極海が溶けはじめていることも、中国の西方が砂漠地帯を拡大、黄砂が年々飛ぶ量が増えていることも、オーストラリアの旱魃とともに、伝えられている。二酸化炭素の流出を止められるか否かが人類の生存にかかっていることは、どんな人間にも理解できる。

(難しいのは、世界が手を組んで、一斉に、脱化石燃料化を図ることに協力できるかどうかだ。産業廃棄物を垂れ流しながら急速に経済成長している中国と、軍需とガソリンを消費する自動車に依存しているアメリカが大きな問題国となるだろうし、ロシアも石油、天然ガスを売ることによって、自国の経済を維持しようとの魂胆が見えている。世界をまとめることには思惑を超える難関があり得る)。

 現在、最も化石燃料を地下に持っているのは中近東とロシアである。アメリカの石油はすでに枯渇に向かっている。「われわれはすでにポスト石油の時代に入っている」との言葉は印象的だ。

(後日の書評にあるように、アメリカは戦略を考えて言動する国である。アメリカの石油はすでに枯渇に向かっているとの判断は百パーセント間違った見方。コロラド州、一州だけで地下には中近東全体と同量の石油が眠っているが、これに手を加えず、アラスカにも、アラスカ近海にも石油は存在するが、開発に手を染めようとはしない。他国の石油をすべて使いきり、それからおもむろに発掘に入るというのがアメリカが秘かに考えている戦略。おそらく、メキシコにも発掘をストップしている化石燃料が眠っているはずだが、アメリカはメキシコ政府にもそれを温存するように助言しているだろう。ロシアのプーチンのように、シベリア、黒海近辺の石油、ガスをパイプラインを使って他国に売るというようなバカはしない)。

 細かいことを一々記すことは控えるが、本書は、苦労はしたけれども、いわば緊急を要する今日的問題に正面から向き合うことができ、学ぶことが多かった。

 もし、世界中で化石燃料を使わなくなったら、それに頼って大きな収入を得ていたサウジアラビアやクェート、イラン、イラク、ロシア、ヴェネズエラなど、その後の世代はどうやって生計を得るのだろうか。もし、そういう逆転現象が起こらなければ、資源に恵まれない国から滅びることになる。技術大国として、日本もスウェーデンに負けずに、脱石油をベースとした経済大国を目指して欲しい。

 いま、人類は叡智を問われている。


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