終の住処/磯崎憲一郎著

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終のすみか

「終の住処」(ついのすみか)
磯崎憲一郎(1965年生)著
帯広告:人生とは流れてゆく時間、そのものなのだ
2009年に芥川賞受賞(第141回)
2009年7月25日 新潮社より単行本初版  ¥1200+税

 「一人よがりの」「自己満足の」といえば、そのようにも感じられるが、人生を暗喩と隠喩で彩った詩であるというイメージで掬いとれば、むしろ斬新な文学性を感ずる。

 とはいえ、芥川賞を受賞する価値のある文学なのか否かは、私の判断を超えている。少なくとも、生きていくことに希望のもてる内容とは思えず、その点では、日本文学界に連綿と伝わる暗さがここにもあって、飛躍が阻まれている感は拭えない。

 十一年間、口を利かないカップルが継続して存在し得る設定はあまりにも現実感が希薄であり、だったら、むしろ「二人して死んじまえ」と言いたくなる。

 文中の、「革靴の足下を見ると、地面のうえで真っ黒いアリたちが統率者も規則も持たず、バラバラに、しかし運命を成就するためにだけ一心不乱に働いていた」という部分には詩としての芳醇さを味わされつつ、感銘を受けたものの、最後まで「終の住処」とのタイトルの意味が解らなかった。


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